白装束を翻し、刀を携えた白騎士が素早くヒトカブリの群れに肉薄する。
一体、二体と瞬く間に切り伏せ、周囲には次第に魔物の死体の山と血溜まりが築かれていった。
後方支援の役目であるが故に白騎士の顔はよく見えないが、ゴキ、と首を鳴らすその後ろ姿からは、どこか鬼気迫るものを感じる。
ノエルに他人の事情に踏み入るような趣味はない。しかし、捨て身のようにも見える戦い方を放っておくことも出来なかった。
周囲の魔物を一通り殲滅した後、白いコートを纏った背中にリラックス効果をもたらす程度の弱い治癒術を使用しながら、白騎士の青年――クレスケンスに声を掛ける。
「首を鳴らすのはあまり良くない。首回りの筋肉を傷めるのもあるが、神経が傷ついて剣を振るうのに支障が出るかもしれない」
仲間の声に気付いたのか、クレスケンスの纏っていた気迫はすっと消え、困ったような微笑みを浮かべながら彼はノエルに振り向いた。
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最終章も半ばですが2章アフター失礼いたします!!!
とんでもなく空気読めない発言してますが、ノエルなりのお前のことを気に掛けているというメッセージみたいなそんな感じだと思います。
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「……っ」
前線に出ていたザリア軍や白騎士達が撤退を始める中、ふと強い眩暈を覚えてノエルは足を止める。
懐から小瓶を取り出しその中身を呷るも症状は治まらず、ふらふらと覚束ない足取りで傍らの樹の根元に座り込む。
「治癒術を使い過ぎた、か……」
他者の精神を汚染する魔力を持つノエルに、治癒術は本来扱えないものである。
その不可能を可能にしているのが、頭部に寄生する花状の魔物――アルフェッカだった。
スピリットの一種であるアルフェッカは、月光を吸収して癒しの力を振りまく能力を持つ。
ノエルの月に由来する魔力をアルフェッカに供給することで、疑似的に治癒術を使用しているのだ。
「最近、また一段と……大食らいになったんじゃないか、アルフェッ……カ……」
物言わぬ相棒に語り掛けながら、ノエルは意識を手放す。
その傍らには、取り落したマジックポーションの小さな瓶が転がっていた。
2022-12-18 14:44:05 +0000