それは、浅層部分の地図を固めるべくネレイドとフリックさん、マサルさんと組ませてもらって記録を埋めながら探索していた時の事。
「お、あそこ天井が壊れてて空が見えるぞ!!良い天気だな!!」
「空なんて久々に見るッスね…太陽の光が身に染みるッス……」
陰鬱な迷宮の中にあってもなお明るく力強いマサルさんの声が、心なしかより明るく響く。
それに応えるフリックさんの声からも警戒による緊張が程よく和らいだ響きがしていた。
そんな二人の声につられて、記録を書き記していた紙面から天井の方へと視線を移す。
そこには、老朽化して崩れた天井と、そこから覗く空の蒼が在った。
迷宮探索が開始されてから結構な日数が経過している。
探索を進める実働部隊は勿論、事務仕事や冒険者たちが記録してきた地図の編纂に清書作業と後方部隊の仕事に追われる僕ですら、篭りきりの日々が続いていた。
その中で偶然とはいえ、僅かでも久々の太陽の光を感じられたことに心のどこかで安堵めいた感情を感じる。
陽の光が差さない世界に居ることは慣れていた。
そもそも僕がかつていた場所は、それが当たり前の場所だった。
それでも。
あの蒼を、光を知ってしまった僕には、もうそれ無しの世界は考えられなくなっている。
地竜としての特性を最大限活かしながら、地竜としての暮らしを否定する今の自分の在りように内心苦笑を禁じ得ない。
僕に人型を、知識を、技術を叩き込んで外に出る切欠まで与えた、あの変わり者の姉は今の僕を見たら何と言うだろう。
『使えるものは利用してナンボであろう?あの世界で生きていたからこそ使える技術があるなら存分に使うが良い』
…まったくその通りだ。
「シュム、笑ってる?」
自分の記憶が作る姉の言葉に、思わず微笑が浮かんでいたのだろう。
ネレイドが怪訝な顔をして僕を見る。
「うん、そうだね。楽しくて」
外に出て、あちこち放浪する中でゼラルディアに訪れて、冒険者ならということで入ったオルギット団だけど、ここでも面白い事ばかりだ。
事象ばかりじゃない、視界に映る人達は様々な色と光に満ちている。
今だって。ネレイドも、フリックさんも、マサルさんも、言葉にするのは難しいけどそれぞれ面白い色と、光をしているのだ。
興味は尽きない。
「知らないことを知っていくのが楽しいんだ。そして、それが誰かの次の探索の助けになるなら、もっと良い」
自分でも、何かができる。何かの役に立てる。
そう思うことができている日々はとても楽しい。
そして、できることなら。
沢山の色彩と光の中のひとつに、僕もなれたら良いな。
***
迷宮探索の日々の中で組ませて探索させていただいた形の話ですが、各キャラクターの行動を縛るものではありません。
問題ございましたらスルーパラレルでお願いいたします。
3人がシュムにはどんな光や色に視えているかは、別の話で描かせていただけたら…良いな…と。
※キャプションは随時編集します※
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▼お借りしました
■雷鳴のネレイドさん【illust/102077743】
└描いてる途中で投稿された小説でシュムがマッピングなどしていてなんとタイムリー…!と思いました感謝【novel/18707072】
■炎の応援団長 マサルさん【illust/102016092】
■聖剣担ぎのフリックさん【illust/101998641】
▼自キャラ
「探し求める竜」シュム【illust/102339564】
2022-11-12 13:18:31 +0000