illust/100004128 からの続き
イチカは巨大な装置の前にYF-4を降ろす。
「発生装置はこれか......直接制御するコンソールパネルなどは無い様だな......修理は全自動で 行うと言っていたが、ならば外部接続モジュールぐらいあるだろう」
イチカはYF-4の頭部センサーを使用して、接続モジュールを探し出す。そのままYF-4のマニュピレイタ―の武装接続モジュールに、装置の接続モジュールを無理矢理捻じ込む。
「ライトニング、解析は出来るか?サポートする」 『問題ありません。解析終了します』
「...マクロスにあったフォールド発生装置と似ている。 これならば!」
イチカはすばやくディスプレイに適当な宙域座標を入力して装置に情報を流し込む。
「3...2...1...起動!」
イチカはエンターキーを押してマニュピレイターに接続された 装置の接続モジュールを引き離して後退を開始する。 その直後、装置が光出し辺り一面が閃光に包まれた。その閃光 は全力で後退していたYF-4を易々と呑み込んだ。
マクロス造反艦隊はボドル要塞の地球への特攻進路を逸らすために、300にも満たない戦力で ボドル要塞を何とか押し返し逸らそうとしていた。だが、そもそもの質量が違い過ぎるため、 難航していた。
「くっ!反応炉はまだ持つか!?」
「あと 10分が限界です!」
「イッ君からの通信は!!」
「通信が乱れ...応答あありません...」
クロエは悲痛な表情で返答する。 それを聞き、鈴は手を震わせてる。
だが、一拍おいて......
「艦長!高出力のフォールド反応を計測!要塞中心部からです!」
クロエが珍しく興奮気味に束に報告する。 そう、イチカが要塞のフォールド発生装置の起動に成功 させたのだ。
「成功した!よし!マクロス及び第 1 艦隊全速離脱!」
「全艦、対電磁・対光波防御!アブソーバーを最大にしろ!」
束は要塞からの離脱を指示する。
マクロス、第1艦隊、ブリタイ艦隊、残存メルトランディ艦隊も次々と要塞から離れていく。
「イチカ様!応答してください!イチカ様!イチカ様ぁ!!」
その間クロエは、必死に通信でイチカに呼びかけるが......反応が返ってこない。
それでも何度も呼びかけるクロエ。
それでも、鈴は黙って目の前の状況を見ていた。 このままでは要塞内にいるイチカはフォールド航法に巻き込まれ、何処とも知れない宇宙の彼方へと飛ばされ、帰って来る事が出来なくなるからだ。
「全艦、シュバルツシルト半径から離れろ!急げ!」 タカトクが必死の形相で叫ぶ。束は思わず肘宛てを強く掴みこむ。
「認めるモノか...」
マクロス艦載機に拾われたマドカは、アームド2の甲板で、その光景を見ていた。マドカは何も出来ない事に歯ぎしりし、それでも溢れ出る涙を拭かないで呟いた。
「皆が助かって...兄さんだけが帰ってこない結末など...認めるモノか...」
そして......眼前のボドル基幹要塞はエネルギーの高まりと共にフォールド航法を発動させ、その場から姿を消す。 宙域に展開していたその他のボドル基幹艦隊も、示し合わせたかのように、次々とフォールドし、この宙域から消え去って行った。
そして再び、静寂がマクロス造反艦隊を包み込んだ。
西暦2020年 9月20日 正午
この日マクロス及び地球・ゼントラーディ・メルトランディとの間に第 1 次星間戦争終戦宣言、 及び、講和条約:通称『銀河条約』が結ばれた。
そして、イチカは還ってこなかった
2022-07-27 09:09:52 +0000