名も無き円卓の鴉＠末代公マイピクの尾洲屋与之助さんの創作世界観「エウロペア」をお借りして、Fate/Grand Orderのコンスタンティノス11世の架空戦記パロをやってみました。伝統的な東ローマ皇帝の軍装を参考に。前回はこちら（illust/99810674）
戦争の講和会議は、ハンガリア王国首都ブダで行われた。敗戦国ビザンティオン帝国には、以下の要求が行われた。
・占領したハンガリア王国領の返還。ハンガリア王国の独立を認め、相互不可侵条約を締結する。
・略奪したハンガリア王国の秘宝「軍神の剣」の返還。
・占領した西ロマニア帝国領、ミラーノ公国領、ベニス共和国領、ジェノア共和国領の返還。ジュリオ・ミスルギの復位を認め、彼をロマニア皇帝として承認する。
・ブレストガウ連合への宗主権を放棄。
・マンスフェルト伯配下のエスターライヒ兵の身柄をエスターライヒ側に引き渡す。
・ビザンティオン領シュリア及びシナイの聖地総大司教エンブリオへの割譲。
・ビザンティオン領内での聖十字教会正統派の宣教師の活動の自由を保障。
・ビザンティオン帝国の旧大セルブ王国領、ブルガール・ハン国領、ヴァラキア公国領の領有は認める。
この条約は「ブダ条約」と呼ばれ、ビザンティオン皇帝マヌエリスは調印した。
戦争に負けて帰ってきたマヌエリスを、ここぞとばかりに守旧派と大領主たちは非難した。国庫と兵の命を浪費してこのザマか！と。しかし、マヌエリスはそれに対し何の対処も行わなかった。夫と義妹を失い、完全に呆然自失としていた。
政治も放り出し、ただ大教会で祈るばかりの毎日。そうこうしているうちに、ある日の夜、マヌエリスはベッドで寝ているところを刺殺された。下手人は、かつてのマヌエリスの敵アンドロニコス・ラスカリスの遺児テオドロスであった。テオドロスは皇帝に即位した。しかし、その暴挙にメガス・コムネノス家一派は激怒し、マヌエリスの姉ダニエリスを皇帝に擁立し、テオドロスに反乱を起こした。
反乱の戦火は国土を荒廃させた。家々は焼かれ、田畑は荒れ、妻に先立たれた夫、夫に先立たれた妻、親を亡くした子供、子供を亡くした親が数えきれないほど生まれた。民草の嘆きは計り知れない。臣民の怨嗟は、ラスカリス家及び守旧派、メガス・コムネノス家一派双方に向かった。
民衆は、平和を取り戻してほしい、と人格者として知られる現パレオロゴス家当主コンスタンティノス・パレオロゴスに皇帝になってくれるよう懇願した。私は帝位から追いやられたパレオロゴス家の人間だ、とコンスタンティノスは最初は断った。が、民衆の窮乏と切なる願いを受け、挙兵を決意した。民衆の支持を受けたコンスタンティノス軍は瞬く間にテオドロス軍を打ち破ってテオドロス・ラスカリスを戦場の露にし、メガス・コムネノス家軍も撃破してダニエリスを捕虜とした。内乱は終わりを告げた。
コンスタンティノスはコンスタンティノス11世パレオロゴスとして即位し、ビザンティオン帝国に再び平和が戻って来た。民衆は新皇帝の即位を歓迎し、国中が大いに沸き立った。
◆
コンスタンティノスは、帝都コンスタンティノープルの一角にある小さな修道院付属墓地にいた。彼はとある墓に花を手向けていた。
「陛下、ここにいらしたのですね」
そこに、メガス・ドゥクス（海軍大臣）がやって来た。
「ちょっと墓参りにね」
「どなたの墓なんです？」
「大罪人にして英雄の墓だよ」
墓碑銘は、「マヌエリス・コムネネ」であった。
暗殺された後、マヌエリスの遺体はテオドロスの命で晒しものになり、辱められていた。コンスタンティノスはそれをこっそりと丁重に埋葬し直したのである。
確かにマヌエリスの西方遠征は無謀であった。誇大妄想に取りつかれた勝算のない愚行であったと言う他ない。しかし、守旧派と大領主が帝国の宿痾であることを見抜いて弱体化させ、軍を近代化し、農業改革を行って庶民を富ませたのは誠に慧眼であった。コンスタンティノスもその改革路線を受け継いだ。そんな偉大な先達が晒しものになって辱められ、不名誉に甘んじているのは、コンスタンティノスにとって堪えられないものであった。
「マヌエリス帝の墓だったんですね」
「そうだよ。――そうだ、君も彼女の魂の安寧をともに神に祈ろう。ほとんど誰も彼女のために祈らないのだから、せめて私たちだけでも。新しきビザンティオンの礎を作った人のために」
「はい、陛下の仰せのままに」
日は暮れ行く。黒檀の闇の中に、マヌエリスの墓石はゆっくりと沈んでいく。
「さあ、宮殿に戻らなくては。明日からまた西方諸国の大使の相手をせねばならない。その英気を養うためにも、きちんと食事を摂り、十分に寝よう」
これで架空戦記パロ本編は終わります。次からはチョイ役の設定を作りますので、よろしければどうぞ～。
以下エウロペアにおけるコンスタンティノスのプロフィール
【名前】コンスタンティノス・パレオロゴス
【身長】171㎝
【出身】ビザンティオン帝国
【兵科】カタフラクト（重装騎兵）
【爵位】アウトクラトール・ローマイオーン
【家門】パレオロゴス家
【宗教】聖十字教会典礼派
【魔力量】500（一般人）
2022-07-21 14:13:09 +0000