※BL・NL注意
荒野をさすらい続けていた騎士は、岩陰の泉に不思議な壺が沈んでいるのを見つける。
騎士は壺を引き上げると、ふたを開けてみた。
すると突然、壺の中から色あざやかな煙が立ちのぼり、大きな魔神が現れた。
魔神は、騎士が封印を解いてくれたことに礼を述べ、かわりに三つの願い事をかなえてやろうと言う。
騎士は少し考えてから、静かに答えた。
曰く──
「俺の願いは、死ぬ日が来るまで生きること。死んだら安らかに眠ること。
この二つ以外に、望むことなど何も無い」
魔神は呆れて天を仰いだ。
「もっと何かがしたいとか、何かを持ちたいとか無えのかよ」
「持てばたちまち奪われる。無ければ奪われることも無い。
持たぬことこそ幸福だ」
騎士は事もなげに言ってのけた。
魔神の口の端が、にやりとゆがむ。
あたりをつつむ妖気が、かすかに揺らいだようだった。
「旅の騎士よ、俺はお前に敢えて聞く。
持たぬことが幸福と言い切れるほど、お前は世界の何を見たことがある。この世界の先には、お前の瞳の色をした何処までも続く緑の森、 俺の髪の色をした広い青空、夜の底のように深い水もある。また天をつく楼閣が連なり、宝石のようにきらめく都もある。俺は、この荒野だけじゃない、天空の王宮も、弓使いの城砦も、死神の住まう街をも、皆この目で見てきた。お前は、このうちどれか一つでも見たことがあるのか。
その目に映したいとは思わねえのか、決して誰にも奪われることのない美しい記憶を、その目に焼きつけて死にたいとは思わねえか──」
低く、歌うようにささやく声が鼓膜を震わせる。
人知を超えた大いなる力が騎士を包み、圧倒した。
「……!」
このとき、騎士は初めて心の底から理解したのだ。
ああ。「魔がさす」とは、こういうことをいうのだ、と。
*
「──という、夢を見たんだ」
黒い空、白い砂、太古の神殿。
柱に腰掛けた白面の青年は、かたわらの石段にたたずむ少女に話しかけた。
全世界を巻きこむ最終戦のさなか、つかのまの戦士の休息だった。
「ふふっ、楽しそうな夢」
少女が優しく微笑む。
青年は白黒の地平線をあかず眺め、自分の心が映し出した謎に、思いをはせているようだった。
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たぶん№4は、崩姫なら自分の言うことを絶対に莫迦にしたりしないと信じて、考えたことを色々言葉にして語っていると思う。で、№.6とは、言葉にせず背中で語り合っていると思う。
そして、この絵を見ている方でウル織も好きという方は、ぜひユーチューブ「ラポール PV」で検索を!
(一護の絵ではなく、白黒で立体的な建物のCGが出ているほうです)
2022-06-03 15:00:04 +0000