スキップするまでではないまでも、あたし、雀寅真彩の足取りは軽やかきわまりない。
照子やサリナにあわせる顔くらい、揃えて縁日で売るほどある!
ショルダーキーボードを譲り受けたのだよ!
どういうコトかといえば、今までのコトだ。照子は中古ながらブランドもののギターを幼馴染みから
分捕ってきてるワケで、それに比べてあたしはレンタルのキーボードで臨んでいたのだった。
照子「まったく頼りないなマーヤ…番組に出るその日までに持ってこなかったら…」
照子は舞台で火を吹けとゆーのだった。常識のない女だ。
まあそれで、あたしはいつものように重い足取りでこの国道沿いの道を歩いていたと思いねえ。
ふいにあたしの目はリサイクルショップのショウウィンドーに引き付けられた。
「…なにこれ、ショルキー…?」
驚いたわよ。きちんとしたメーカーの逸品が5000円!今月の食費を削れば無理な出費ではない。
思わず財布の持ち金を数え直したとき…。
「おんしゃ、それはやめた方がええわ。ワケアリ品掴まされるで」
ふいに肩を掴まれた。見ると、ショートカットの謎の女性。優しそうだが指に力が籠っている。
謎の女「ええ楽器ゆうのはな、ええ値段覚悟せにゃ買えんもんやで。さもなくばウラがある。覚えとき」
マーヤ「あの、あなた…」
謎「すまんけどな、一日だけうちの店で働かんか?いかがわしい店やない、ちゃんとした日本料理店や。それと同じショルキーが報酬。旧モデルやけどメンテナンスは万全やで」
マ「あ、あの、イイんですかあ?」
謎「ウソは言わん。信じられないなら帰り」
マ「は、働かせていただきます!」たぶんあたしの頬っぺたは真っ赤に染まっていたろう。
それが昨日のことだ。仕事は決して楽ではなかったけど、それでも美味しいまかない丼を食べさせてくれ、最後にショルキーを渡してくれた。見ず知らずのあたしにここまでしてくれる理由だけが判らなかったが、この人の好意は受けねば!だって、こんないいカモいないもん!!
照子「まーやぁー、こっちだよー!」照子は貸しスタジオの玄関から手を振っている。
マ「てるこぉおー、これ見てこれ!大勝利だよここにきて!世の中甘いよー!」
…っと言いかけたとき、サリナが仲睦まじそうに、謎の金髪ショートの肩を抱いて出てきた。
サ「マーヤ、来たな!キーボードがないって言ってる仲間の話をしといてよかった!はるかさんが手放す品があるって」
はるか「ちょうど良かったわー、うちは橘はるか、サリナとは大阪で出会ってからよくして貰ってる身よ。おまんがマーヤやね。今後照子ともどもかえらしがってゆくから、よろしゅう」
確かにウラがあった…。
つづく。
今回のサンクス:ベリーさん(user/13465110)ちの橘はるかさん。
なお和歌山弁はムチャクチャです。ごめんなさい!
2022-05-12 07:34:42 +0000