黄昏のコンドル

ヘリオス

酒に煙草に女にギャンブルが好きという無茶苦茶な設定が与えられた結城凱ことブラックコンドル。当時の制作陣によるとファイブマン後半で持ち直したとはいえ予断を許さない状況だったらしく、ジェットマンがあまりにも破天荒な作りになっていたのはある種の賭けだったことが窺える。

ある日突然ヒーローとしての力を授けられ、襲い来る敵と戦うことになる。こういうスタートを切る話はデンジマン以来戦隊シリーズではよくあることだが、ブラックコンドルこと結城凱は一筋縄ではいかなかった。これまでのように力を受け入れると思いきや、彼にとっては自分の楽しみだけが全てで、世界を救うことには興味がないというあまりにも無責任な振る舞いをする。しかしこれは冷静に考えると至極まっとうな心境である。前述の状況に陥ったら対応に困るのが普通のことではないだろうか。凱といえばプレイボーイっぷりばかりに目が行きがちだが、彼の冒頭の振る舞いは非常に納得のいくもの。したがってジェットマンは、ヒーローものに寄せられるであろうツッコミに正面から取り組んだ作品ということになる。ダイナマンで放送時間が短くなったことを逆手に取った制作陣は、バイオマンでドラマとしての密度を上げ、チェンジマン以降大河ドラマとしての特性が与えられた。そして新たに付けようとした変化こそ、人間ドラマとしての性格だった。その宿命でもあったのか、凱はシリーズを追うごとにレッドホークこと天堂竜との友情を深めていき、最後は命を預かるとまで言い放った。プロデューサー曰く、戦士は戦士である以前に人間とのこと。これ以降、途絶えるかと思われた戦隊シリーズは不死鳥のごとく息を吹き返し、恐竜のごとく巨大化して隆盛を極めることになろうとは、何とも不思議な話である。

ジェットマンが戦いを終えてから30年後、脚本を手掛けた井上氏は令和の桃太郎と称される戦隊ヒーローの脚本を手掛けることになる。此度もまた、おおよそヒーローらしからぬ人員ばかり揃えた戦隊ヒーローとなったのは偶然か、それとも・・・?

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2022-03-14 14:45:01 +0000