いつか巡ってまた

仁江呼鳥

ここに流離いの刀一振りあり。
名を変え姿を変え、幾度の戦火を越えてきた奇跡の小太刀。
雨ざらしで泥に埋もれても尚鈍く、必死に輝いたのは何故か。
苦い歴史を振り返って、幼い横顔がため息をつく。

「永遠なんてものはない。だから、最悪な時代だって続かないんだ」

言い聞かせるような囁き。
未だ残った遺恨と決別する決意表明。
多くがその手から零れ落ち、自らも散り散りに砕け散った。
東の空を眺め、何度後悔したことか。
こんなことになるなら、と。こんな気持ち知りたくなどなかった、と。
けれども、忘れられるはずがない。
大切な思い出たちを丸ごと抱えて、生きていくほかない。
苦悩と挫折の果て。
長く苦しい旅を経て、彼はここまでやってきた。

夜明けの空に渡り鳥が飛び立つ。
朝日に照らされた少年の名前を呼ぶと、燈火色の瞳が大きく見開かれる。
新たな音の響きが胸の内に広がるのを、強く優しく慈しむ。

どこかで終わった彼らの物語は、君たちの物語へと。
巡り巡って受け継がれ、一度は途絶えた運命が、いま再び時代に駆け出してゆく。

fin

イメージソング:羊文学「光るとき」

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2022-03-09 11:00:05 +0000