2/3 世は節分で鬼だマメだ恵方だと騒ぐ時期。
月光舞獅子姫は頭を悩ませていた。それは毎年恒例となってしまった行事に関してだった。
毎年のバレンタイン。月光の仲間内から激流葬レベルでチョコを貢がれるのだ。
その様はもはや一種の陵辱あるいは拷問といって差し支えないもので、当然ながら食うにも困る。
自身にベタつくチョコ、床を汚すチョコ、チョコに塗れたチョコ…
いくらレベル12・攻撃力3500の二回攻撃の彼女をしてもその量のチョコを処理するのは骨が折れる。平均して一週間はかかる。
昨年なんかブラックホールに匹敵するチョコに思わず効果破壊耐性を貫通して破壊された。
どうしよう。すでに皆の息遣いもテンションもおかしかった。一番気心の知れる舞豹姫でさえちょっと話しかけただけでもその顔は今年のチョコ撃を想像してか妖しい笑みと興奮の吐息に満ちていた。
その手にはダンボールいっぱいのチョコ…
どうしよう。それを見るまで「今年は大丈夫だろう!流石にみんな昨年で懲りただろう!!」
などと現実逃避気味だった彼女もそのチョコ融合素材たちという現実を突きつけられては
タダではいられない。しれっとデモンズチェーンも忍ばされていたことも見逃さなかった。
逃げたらかえってふん縛られ被害が拡大するだろう。もはやどうすることもできないか?
あまりの絶望にもはや感情が死につつある彼女の元にふと一枚のカードが舞い降りる。
そのカードをを見るや、彼女は活力を取り戻す。そしてその耳にどこからともなく声が聞こえた。
「そこ知れぬ絶望の淵に沈め」
その言葉の意味はどちらかというと彼女を追い詰めるようなものではあったが、なぜかむしろ
真逆に一種の激励のようだと彼女は感じた。
周囲をそれとなく捜索したがその声の主はついぞ見つからなかった。そもそもそれが想像と
一致する人物であれば月光デッキの中にいるような人物ではない。人がデッキ内に?
だがそんなことはどうでもよい。渡されたカードをしばらく見つめ、一息つくと彼女は
それを懐にしまった。そしてその男への感謝の念を抱き、「チョコレートに絶対抗ってみせる
みんなに一泡吹かせてやる」と固く誓ったのだった。
かくして彼女はチョコ防衛の最終手段〜聖なるバリア ミラーフォース〜を手に入れたー。
果たして彼女は無事滅びのチョコレートストリームから生き残れるのだろうか。
月光の仲間たちに一矢報いることができるのだろうか。
2022-02-14 14:45:37 +0000