Night Flight!

こばひろ
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自分の写真展で、ドイツの4都市を巡業することになった。

ドイツへ発つ飛行機の出発時刻まで、まだかなり時間がある。ひょんなきっかけで同行することになったロルフさんと共に、空港内のカフェでモカを飲みながらゆっくりしていたら、不意に知っている曲が流れて来る。
絶対に吹けないと分かっていつつも口笛でメロディをなぞろうと唇を尖らせていたら、今し方こちらに着いたばかりと思しき旅行者と目があって、ひどく恥ずかしい思いをした。

背中に大柄な楽器ケースを背負うその女性は、何でもこの国に住む知人に誘われて演奏旅行に来たという。

自分に観光ガイドはとても務まりそうにないが、それでも音楽人である彼女の休暇が有意義なものになるであろうことは、確実に保証できる。なんといってもこのメルクリウスには春夏秋冬、朝から晩まで、街のあちこちに音楽が溢れているのだから。自動販売機なみにどこでもあるライブハウスで閃光と躍動のロックを楽しむもよし。僕の知り合いの気紛れな店主がやっている喫茶店で美しく青きジャズにひたるもよし。何なら飛び入りしたって、街角で唐突にデスボイスで叫んだって、この国ではたいていの者たちが困った顔をするどころか、両手をあげてわいわいはしゃぐ、ちょっと変わった国なのだ。・・・なんてことを言ったら、それは楽しみだわ、と彼女は笑った。

//今作は相互フォロワーのすぺ(user/4844485)さんとのコラボ作品です!シリーズ作品[viridian SONGs]より、登場人物の一人である天生美里さん(以下、美里さん)を描かせて頂きました。

ウチからは写真家のユアン・キャンヴェルと、メル鉄のベテラン検車掛長·ロルフが登場。美里さんがこの二人とすれ違うなら、空港というシチュエーションもいいかなと思い描いてみました。美里さんがメルクリウスで演奏旅行を満喫できるといいな~と、作者も思っております。

魂揺さぶる躍動、流れる月日の中での喪失と、再び歩みだす新しい日々。音楽を愛するものたちのドラマを印象的な詩や演奏シーンとともに描く[viridian SONGs](https://www.pixiv.net/user/4844485/series/7296)、音楽に親しんできた方もそうでない方にも見応えのある、素敵な作品なので皆様ぜひご覧ください。

タイトルはThe Brecker Brothersの同名曲から。考えてもみたまえ、ユアン君よ。あんな難しいメロディを口笛で吹けるわけがなかろう。

#メルクリウス鉄道#traditional#girl#old man#town#imaginary railways#train#music

2021-11-26 12:20:46 +0000