義兄になった義姉

月魄(つきしろ)

 このシチュエーションに見覚えがあったので早々に夢であると気が付いた。

 それにしても…今回の彼女…いや彼は何というか一言でいうと艶っぽい。
 これも僕の願望なのだろうか。

 いやぁ…どうせ義姉さんの夢を見るなら普通に女性の姿が良いし、僕だってこんなスカートを履いた女の子の姿じゃ無くて普通の格好でカタリナをエスコートする夢で充分嬉しいのに。

「どうしたんだい、キース。何でそんなに困った顔をしているんだい?」
「ふえっ」
 艶のある綺麗な顔で覗き込んでくるので思わず変な声が出てしまった。
「この義兄に話してごらん」
「いえ、その…」
 カタリナの麗しい顔に見惚れていたとかどうして言えようか、そもそもこれは夢なのだし…夢…。夢だったら…、ん、そうか。夢なのだから気にしなくても良いのでは?
「あの…見惚れていたのです」
 夢であるのはわかっているのに外見の女の子の格好に中身の自分がつられてちょっと気恥ずかしくてもじもじしてしまう自分がいる。
「一体何に?」
 いつものように義姉さんと呼ぶべきか…いやそれは今は違う気がする。
「…お義兄さまに」
 なんかいつも以上に恥ずかしいー!心臓がドキドキする。
 女の子の気持ちってこんな感じなのっ?!

 艶のある茶色の髪の毛をなびかせて僕をスッと片手で抱き寄せながら
「キースにそう言ってもらえるのは嬉しいな」
 と、どこかの王子の様な事を平気でしてくるので手に負えない。

 …あの王子の事は夢の中でも考えたく無いのだけれど…と一瞬気持ちが上の空になっていたら義兄のカタリナが更に僕を引き寄せてもう少し近づけば男の義姉さんの唇が僕に触れそうな距離感で…義姉が義兄で僕は女の子でカタリナに…と色んな意味のドキドキが頭を駆け巡り正常な判断が出来ない。

「お、お義兄さま。ち、近いですっっっ」
 僅かばかり理性の方が優勢になり慌てて身構えた。
「ふふ。可愛いな、キースは。僕の自慢の義妹だよ」
 実際のカタリナには今までも振り回されてきているが、夢の中のこの人物…只者じゃ無い!
 これは僕がカタリナにこうされたいという願望なのか?!

 というか…それは

「僕がしたいんだーーー!」

「何を?」

 己の熱を帯びた心の叫びは譫言となって発せられ、自らがそれで起きたわけなのだが、問題は自分の横に彼女が何故か座っている事だった。
「い、いつからそこに…?!」
「キースがウトウトしだしてからよ。広間のソファで寝るなんて珍しいと思って」
「僕、何か言ってた…?」
「特に何か寝言らしい事は言ってなかったけれど、顔が熱っていたから大丈夫かなぁってこうやって覗き込んじゃった。」

 と、カタリナの顔が近づいてまさに先ほど見ていた夢と似通ったシチュエーションになる。
「こうやっておでことおでこでお熱計ろうとしたらキースが僕がしたいんだーって急に起きちゃってびっくりしたわ」
「!!!」
「お仕事で疲れてるんだろうけれどそういう時は自分のお部屋でしっかり寝るのよ」
「うん…心配してくれてありがと…」

 なんだかいつもと逆だ。
 でも心配してくれてとっても嬉しい。

 そして先ほど見ていた夢を思い出し、夢の中でも現実でも何だかんだで寸止めで勿体無い事をしたと思いつつ横にいる義姉を見て、何はともあれやはりカタリナは女の子で僕も男のままが良いと実感した。

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今回の夢の義兄は、宝塚のトップスターの男役の様な感じでの妄想です。

#Hamefura#My Next Life as a Villainess: All Routes Lead to Doom!#Katarina Claes#Keith Claes#girl#boy#illustration#Keith/Katarina

2021-11-15 17:23:42 +0000