【架空戦記パロ】サー・フランシス・ドレイク【エウロペア】

名も無き円卓の鴉@末代公

マイピクの尾洲屋与之助さんの中世~近世ヨーロッパをモチーフとした創作世界観「エウロペア」をお借りして、Fate/EXTRAのフランシス・ドレイクの架空戦記パロをやってみました。どうかよろしくお願いします。前回(illust/93464101)の続きです。

「アタシは宵越しの弾は持たない主義なんだ。野郎ども、弾薬庫が空になるまで派手にぶっぱなしな!」
「アイアイ、姐御!」

ブリタニア艦隊の重ガレオン船が右舷をこちらに向けて砲を斉射してくる。大砲が発達したとはいえ、まだまだ海戦は接近戦でけりをつけなくてはならない。ビザンティオンの艦船は弾雨の中を前進する。敵の重ガレオン船は動かず射撃を続けていた。
ブリタニア艦隊の艦載砲はカルヴァリン砲とファルコネット砲だ。どちらも長射程だが、その代償として低威力である。それでも、ビザンティオン艦隊の艦船にはダメージを受けて航行不能になるものが続出した。

「流石はドレイク、自軍の船の強みを知り尽くした行動を取ってくる」
バシレイオス・ウラノスは歯噛みした。このままでは徒に兵と艦船を失うだけだ。
しかし、彼には作戦があった。

「ジェノア、ヴェニス、西ロマニアの艦隊に集中攻撃をかけよ」
敵将の一人ケイ卿も、円卓の騎士の一人だ。そうであるならば、自らに助けを求める者がさいなまれているのを黙って見ていることはできないはずだ。騎士の誇りにかけて。
ビンゴ! ビザンティオン艦隊が逃げ腰の連合艦隊に追撃をかければ、ケイ卿の配下の部隊がのこのこと救援に出て来たではないか! やはり凡将の評判は間違いではなかったか。ブリタニア艦隊の陣形が崩れ、敵旗艦「プリドゥエン」の周りが手薄になる。

「げぇ! ケイ卿サン陣形崩してまで連合艦隊を助けに行きやがったよ。これだから騎士道バカは……。いや、そんな文句を言ってる場合じゃない。あんな間抜けでも、うちの国には必要な男だ。野郎ども、海賊の誇りにかけてあの男を死なせるんじゃないよ!」
「アイアイ、姐御! すぐに行きまさ!」

ドレイクは自身の乗艦「ゴールデン・ハインド」、そして麾下の一部隊を率いてケイの後を追った。

その時、ビザンティオン艦隊に追い風が吹き始めた――。



今だ! エイレーネー・ウラネネは確信した。今ならこの風に乗って、ブリタニア艦隊旗艦「プリドゥエン」に肉薄できる! 護衛の艦船も少ない!

「私に続けー!」

エイレーネ―は、配下の艦隊を率い、全速力で「プリドゥエン」目掛けて航行した。ブリタニア艦は砲撃してくるが、向かい風となっているので思うようにビザンティオン艦に当たらない。追い風を受けたビザンティオン艦隊は、猛烈なスピードで迫る。

「ロンゴミニアド、発射準備」
モルガンは今こそこの魔導決戦兵器を使う時だと確信した。この一撃で敵艦隊を薙ぎ払ってやります。

「ん? あれは……」
エイレーネ―は、「プリドゥエン」の船首から飛び出した騎兵槍のようなものに気付いた。確かあれは、密偵の情報にあった……。

「敵の秘密兵器ロンゴミニアドよ! 全艦、射線から離れて!」
だが、船は急に方向転換できるものではない。

「3、2、1、ロンゴミニアド、撃ちなさい」
「発射!」

「プリドゥエン」の船首から、眩いばかりの光の柱が放たれる。光の柱はビザンティオン艦隊に殺到し、艦船を飲み込んでいく。

「何て威力なの……」
エイレーネ―は唖然とした。ブリタニア本国には、これと同じものがあと11基あると思うと、末恐ろしくなる。

「被害は?」
「光に飲み込まれて消滅した艦が四隻、大破し航行不能になった艦が二隻です。こんな恐ろしい兵器を持つ相手には勝てません。撤退しましょう……」
「いいえ、このまま攻撃を続けます。ロンゴミニアドは一回発射すると次弾を撃つ魔力を充填するまで時間がかかります。その間に接舷戦闘を挑みます」

ビザンティオン艦隊は、被害を受けてもなお前進し、そして、「プリドゥエン」及び周囲の護衛にラムアタックを仕掛けた!

「護国卿モルガン殿とお見受けいたす。私はドルンガリオス・トーン・プロイモーンのエイレーネ―・ウラネネ。貴殿の身柄貰い受ける!」
「できるものであれば、やってみれば良いでしょう」

「プリドゥエン」の甲板の上で、エイレーネ―率いるビザンティオン兵と、モルガン率いるブリタニア兵による白兵戦が始まった。勝機をものにせんと挑みかかるビザンティオン兵、自らが忠誠を捧げる主上の命を守ろうと必死になるブリタニア兵、どちらも士気は最高潮にあり、それだけにすさまじい血みどろの戦いとなった。

「……」
その様子を無表情で眺めるモルガン。彼女が手に持つ杖でトン、と甲板を叩くたびに、ビザンティオン兵が内部に火薬を仕掛けられたかのように爆発する。ビザンティオン側の魔導騎士が炎属性の攻撃魔法を繰り出すが、モルガンの呪い返しを受けて沈黙する。
モルガンを止めなくては勝機はない。エイレーネ―の愛刀は、耐魔力処理が施されたダマスクス鋼製のパラメリオン・サーベルである。これがあれば、多少はモルガンの魔法に抵抗できるはずだ。

「斬り捨て……御免!」
「お母様には指一本触れさせねーよ!」

エイレーネ―のサーベルによる一閃を防いだのは、ブリタニア陸軍軽騎兵旅団長バーヴァン・シーであった。

「その程度でお母様に近づこうだなんて百万年はえーんだよ!」
「くっ……」

バーヴァン・シーの剣術は見事の一言に尽きた。彼女に圧倒され、どんどんモルガンから引き離されていく。

「おや、ゴールデン・ハインドが戻ってきたようですね。ケイ卿も無事です。降伏するのはあなた方の方ではありませんか?」
モルガンの言う通り、最早この攻撃は失敗だ。次善として考えるべきなのは撤退である。だが、この場から無事逃げる手段が、あれしか思いつかない……眉唾なものだが、やるしかない。

「えい!」

「? 笑止、このようなものでこの状況を打破できるとでも……」

モルガンはエイレーネ―から投げつけられた小袋を開いて見てみた。すると、その中には――。

「無理……芋虫……無理……」

モルガンはさっきまでの威勢はどこへやら、眼を回して口から泡を吹き、その場に倒れこんでしまった。

「ちょっ!? お母様!! どういうこと!?」

「今のうちに撤退だ!」

バシレイオス・ウラノスも、最早潮時だと想った。敵の損害は大きいが、こちらの損害もまた大きい。撤退の合図を出し、ビザンティオン艦隊は一時ナウパクトスへと引き上げた。

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2021-10-27 10:15:22 +0000