「プレゼント?トレーナーが贈ってくれるのならなんでも嬉しいよ!」
先日のレースで好成績を残すことが出来たファインモーションのため何かプレゼントしてあげようと考える。
しかし、何が良いか分からないため直接聞いてみたところ、さきほどのようなコメントが返ってきた。
「なんでも良い」がこんなに困る言葉だったのだなと改めて感じる。
考えてみるのだが、彼女が好きそうな物となると一つしか思い浮かばなかった。
それならばいっそのことと思い「47都道府県ご当地ラーメン詰め合わせセット!」を買いプレゼントしてみる。
まあまあ良い値段はした。
懐が寂しくなったが、それ以上に全身で嬉しさを表現している彼女を見て、良い買い物をしたなと我ながらに思う。
クルクル回る彼女から
「トレーナーは何をプレゼントされたら喜ぶ?」
ふいに質問される。
彼女から何を貰っても喜べる自信はあるが『なんでも良い』は自分が悩んだように困らせてしまうだろう。
それにこの時は喜ぶ彼女の姿に感化されて、最近欲しい物をつい呟いてしまった。
数日後
自宅のチャイムが鳴る。
テレビドアホンには顔馴染みの宅配のお兄さんが立っている。
すぐに出るがいつもの爽やかな挨拶はなく少し緊張しているように見えた。
「宅配便です…。今日はちょっと…多いです…」
困惑しながらダンボール箱を渡してくる。
正確には玄関先に十数個のダンボール箱が置かれた。
「これで全部です。差出人は全てこの方ですが、心当たりはありますか?」
『発払い』と薄く印字されている添付伝票の依頼主欄には、完全に心当たりのある名前が書かれていた。
とりあえず運び入れたはいいもののリビングが『所狭し』となってしまった。
一体何が入っているのか。
確認の為おそるおそる一つの箱を開封してみる。
中身はこの前つい呟いてしまった『欲しい物』だった。
しかもそれが一つだけではなく、その全てがハイグレードもしくはヴィンテージ物で普段の自分では手が出せない高額な物ばかりだった。
それがまだ『最低でも10個は箱詰めされている』ことに少し目眩がした。
彼女の厚意を受け取るにせよ、一つ『懸念』があったため全ての箱を開ける作業を始めた。
中身の確認をしていたらいつの間にか日が傾きはじめていた。
懸念していたことは見事的中してしまう。
『贈与税が発生するほど』プレゼントが送られてきてしまっていた。
プレゼントは嬉しいがこれは流石に貰いすぎている。
「こんなには受け取れない」
そう伝えるためスマホを取り出し連絡を取ろうとするとディスプレイには彼女の名前が映る。
バイブレーションと共に受話器のマークが表示されていた。
即座に押し通話を開始する。
「あ、トレーナーこの前はありがとう!
この前貰ったラーメンの詰め合わせ、まだ全部は食べられてないけど、食べたのは全部美味しかったよ!
それでね、お返しのプレゼント今日届くと思うんだけど…あ、届いた?良かった!
…え?いいよいいよアレ『ほんの気持ち』だから!
え、そうじゃない?
……あぁ、そういうのあるんだ。ごめんね?気づかなくって。
そうだ。今ねちょうどトレーナーの家の近くにいるからそっち行くね」
タイミング良く彼女は近くにいるらしくこの件について直接話せそうであった。
通話が切れて1分も経たないうちにチャイムが鳴る。
見慣れた姿がテレビドアホン越しに見える。
玄関を開けて彼女と対面するが、外が物々しい雰囲気であることに気づく。
家の前に彼女が乗ってきたであろう高級車が停まっているがその前後に2台ずつ停まっているのが見える。
それらの高級車からスーツ姿の人間が数名降りてきて周囲を警戒するように視線を動かしている。
彼女にとってはこれが通常なのか、何事もなくこちらに話しかけてくる。
「トレーナーさっきはごめんね。『贈与税』とかそういうこと全然知らなかったんだ。
でもプレゼントはあげたいの。
それでね!今日、パパとママが仕事でこっちに来てるの。
こういうことすぐ解決してくれると思うんだ。だから一緒に来てトレーナー!『紹介するから!』」
そう言ってすぐ側に停められている黒塗りの車に乗せようと手を引くファインモーション
2021-10-13 10:00:00 +0000