ドラキュラウンス

+慧+@C105(日)西か-4

ハロウィンパーティ当日
寮の周りは在学生の他、外部から来た人たちで大変賑わっている。
楽しそうな笑い声や耳をつんざく様な悲鳴が時折聞こえてくる。
今日のトレーナー業務は「見回り」という名の実質休みなので、気になったところを見て回っていた。

昼頃になり、一息つくため学園内の自販機コーナーに立ち寄る。
微糖コーヒーを買い近くのベンチに腰掛ける。
一口飲み、ふぅと空気を吐き出すと脚の疲れがじんわりと表面に現れてきて心地が良い。
自販機コーナーであるにも関わらず周囲には人の気配はない。
遠くからハロウィンパーティの喧騒が聞こえてくるだけだ。

そろそろ戻ろうと空になった缶をゴミ箱に入れ振り返った時

「かぷっ」

右人差し指に痛みが走る。
突然の事だったので咄嗟に腕を引き指先を見る。
特にケガはしていないようだ。

「にゃははー油断しましたねートレーナーさん」

先ほどまで人の気配はなかったのに、目の前にはドラキュラ伯爵が着るような黒いマント、オバケが描かれた耳カバーなどを身に着けたセイウンスカイが立っていた。

人差し指の痛みはスカイの甘噛みによるものらしい。
鋭く伸びた八重歯で噛まれなくて良かったと安堵する。

「おや?何を安心しているんですか?このドラキュラネコセイちゃんに噛まれた人は、眷属になってしまうのですよ?眷属になった人は一日中セイちゃんから離れてはいけません。もし離れてしまったら…明日のトレーニングをサボってしまうという恐ろしい呪いがかかっています。
しかしご安心ください。この呪いを解くのは至って簡単。今日一日セイちゃんを逃がさなければ良いんです。おススメの方法は手を繋ぐことだよ。わー簡単だね。
というわけでトレーナーさん。いや眷属さん私についてきたまえー」

そう言いながらドラキュラネコを名乗る彼女に引っ張られてハロウィンパーティ会場へと進んでいく。

どこまで本気か分からない彼女の言い分だが、トレーニングをサボることに関しては高確率で実行するのでなんとしても阻止しなければいけない。
今日はおとなしく付き従うことにしよう。

しかし、だからと言って彼女がおとなしくしてくれる、というわけではない。

会場に着くと気になったものへフラフラとあちこちに移動しまわるのですぐに手が離れそうになってしまう。
昼過ぎでも人は減らず、むしろ増えていく状況だった。
そんなところで小柄な彼女を逃がしてしまったら本当に見失ってしまうだろう。

どうすればいいか考えて彼女の手を再度つかんだ時、ふと思いついた。

彼女の指の間にこちらの指を入れ、手のひらを合わせような形で握りこめばどうだろうか?
実際に試してみたところ、彼女の小さな手を包み込むように握りこむことができ、安定感が増した。

人混みに流されそうな時や彼女が興味を持ったものにフラッと行く時も引っ張られるだけで離れることはなかった。
この手の繋ぎ方をしてからは「こいつワザとやってるな」という急に離れようとする行動はあまりしなくなった気がする。
それはそれで気がかりだったので
具合でも悪くなったのか聞いてみたが

「え?あ、うん…大丈夫だよ、うん」
とだけ返ってきた。

うつむき少し頬も赤くなっていた。
人混みの熱気に当てられたのだろう。
無理もない。

クールダウンするためにと、またあの自販機コーナーへ向かう。

何か飲みたいのはあるか聞くと

「…にんじんジュース」

と短く返ってきた。

冷えた350ml缶を手渡すとそれを頬に当てているのが見える。
次の瞬間にはそのまま歩き去っていこうとしていた。

急な行動だったためどう対処していいか分からなくなってしまい思わず
「眷属のはどうすればいいんだ?」
と投げかけてしまった。

ピタッと歩みが止まり、数秒の静寂が流れ

彼女が振り返る。

「いやートレーナーさんまんまと騙されてしまいましたねーイタズラ大成功!眷属の効果時間はとうの昔に切れちゃってました。それに気づかずトレーナーさんってばセイちゃんを逃さないように一生懸命だったですねー。そしてこれ!タダでにんじんジュースを手に入れてしまったわけですよ。トリックアンドトリート!ってねー。今日はもうセイちゃん大満足。そんなわけだから私は帰ります。それじゃあねトレーナーさん……また明日」

次の瞬間には既に走り出していてあっという間に背中が小さくなっていく。
今から追いかけても決して捕まえることは出来ないだろう。

彼女の最後の言葉から、明日またトレーニング場で会えることを信じてハロウィンパーティ会場の見回りへ戻ることにした。

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2021-10-07 12:26:11 +0000