旅先でのいっときの休憩で目についたホテルに泊まることにした。
まだ、私には旅になれていないだろうからとナインからの提案だったが。
本人は酒をゆっくり飲む口実にしたかっただけであった。
「だって、酔っ払うと人間の姿のままでいられなくなるでな。」
「いや、あなたなら酔わないようにできるでしょうが」
「いやいや、酔わない酒はもはや酒ではないのだよ。」
この龍は酔っ払うと角や羽や耳だけではなく、肌も晒すので厄介なのだ、調子がいいと火も吹く。
「吹かぬぞ。」
旅先の宿にて
2021-06-06 10:36:20 +0000