■今回のお題の「車内探訪」は、久しぶりに長崎ネタ、おなじみ長崎電気軌道の、多分200型の運転台です。■電車の制御方式は直接制御に始まり、のち間接制御に移行、さらにチョッパ制御を経て現在の主流はエネルギー効率にも優れたインバータ制御となっています。制御器、すなわちマスターコントローラーももっぱらT字型のワンハンドルになりましたが、在来型の路面電車は直接制御が主流です。マスターコントローラーも大きくて立派なものが運転席に陣取っています。■そんな大きなマスターコントローラーを描きたくて、このイラストを描きました。砲金鋳造なんでしょう、ピカピカに輝く金色の天板とマスコンハンドルの光沢表現には特に力を入れました。質感がうまく表現できていれば幸いです。■ちなみに、路面電車に乗るとき、前扉直後のこの立ち位置は、私にとっての「特等席」です。前面展望は楽しいですし、大きなマスコンハンドルを豪快に回す運転操作もじっくり観察できますからね。オープンな運転台、これも路面電車の魅力です。■力を入れたというと、電車の窓外にも力を入れています。前から描きたかった「長崎くんち」の龍踊り(じゃおどり)が、信号停車中の電車の前を横切っています。
「長崎くんち」は、鎮西の神様である長崎諏訪神社の秋の例大祭です。例年10月の7日から9日まで開催されるお祭で、長崎弁では9日を「くんち」と発音するのでくんちと言うそうです。
■その長崎くんち、全ての奉納踊りを見るなら、桟敷会場である神社境内の整理券を入手するのが早いのでしょうが、発売日の未明から並ぶ必要があり、それも即完売ということで、並大抵の努力では見ることができません。ただし、それ以外にも“庭見せ”といってスポンサーを周って踊りを披露しています。桟敷で見れなくても、“庭見せ”は誰でも見ることができます。
イラストは、“庭見せ”のために龍が移動しているというイメージで、龍を担ぐ“踊り手”やたくさんの見物人を配して、賑やかな雰囲気にしてみました。信号待ちしている運転手さんは女性ですが、長崎電軌に女性運転手さんがいるのか、長崎を離れて二年以上経った今となっては定かではありません。「車内探訪」というより、某「世界の車窓から」みたいなイラストになってしまいました。■初出:ネコパブリッシング社「レイルマガジン」誌2010年4月(#319)号
2010-02-26 14:11:01 +0000