大雪原での一夜が過ぎ、朝日が大地から少し顔を出した早朝にイスカとウィルがハリを散策と称して野営地より少し高台にある場所へと連れ出してくれた。
なんでも雪の中に温泉の湧いている場所があるらしく、元気のないハリを気遣ったウィルがイスカと示し合わせて【早朝の温泉でほっこり休息作戦】を立てたらしい。地霊達も何体か同行したので危険はないだろう。
いつ客が来ても困らないようウィルは丹念に下準備しているが、さすがにこの大雪原では茶房に立ち寄る客はいない。
微かな羽ばたきの音の後、地面に何かがズシンと降り立った振動が走る。
暫し間を置いて『さくり』 と雪を踏みしめる音がした。
気を落ち着ける為に深呼吸を一つしてからカマクラから外に出ると、朝日を背にして何者かが雪原に立っている。
大きなヒヨコのような鳥と小さな少女だ。
少女からは強い魔力が感じられ、その背には見覚えのある鍵の意匠の杖が装備されていた。
-あの時の鳥乙女だ-
転移術で撒いたと思っていたが、相手の方が上手であったか(魔力も多分私より強いのだろう)
肩の上にいるダソス・モロが低く警戒音を発して毛を逆立てた。私も平静を装おうと思うのだが、体が強張っている。
「ここで素敵なお茶がいただけると聞いて立ち寄らせていただきました。お茶を一杯ご馳走になってもいいかしら?」
少女は軽やかな声でそう言った。
逆光でその表情はよく見えなかったが、月の輪のような金色の眼だけははっきりと見てとれた。
そう、あれはハリと同じ夜空を渡る金色の月の眼。
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とりあえずまだ続きます。
次回の物語は文字での投下予定です。
自キャラ
大地の巨竜アンドラス【illust/87860414】
ダソス・ウィル【illust/87860414】
赤毛のイスカ【illust/88040332】
月の眼のギネカ【illust/87860414】
月の輪の魔女と使い魔ヌーリ【NPC】
何か問題がありましたらご一報くださいまし。
企画元様【illust/87556705】
2021-04-07 16:01:05 +0000