すると、何処か遠くから……地殻が収縮しきって或る眼に見えない層を
なしているような非常に遠い何処かの果てから、
ゆるい、ひくい地響きが細々と、きれぎれに聞えはじめてきた。
それは大地の上をのろのろと這って、回転してくるような地響きであった。
それははじめはひくい、かすかな遠雷のように顫え、鳴り響いていたが、
次第に近く、次第に速くなりゆくにつれて、
霧粒と霧粒にはさまれた幅せまい乳白色の層も、暗い虚空も、
ゆらぎ漂う霧の壁を押しゆるがす風も、
すべてがざわめき、どよめきはじめた……。
目に見えぬざわめきはざわめきを呼び、どよめきはどよめきを呼んで、
顫えるような地響きが虚空を回転しゆくにつれて、
彼をかこむ何処か真近かなあたりからかすかな忍び
笑いすら起ってくるように思われた。
2021-04-04 11:00:03 +0000