大雪原は登山ルートとしては難関である。
と聞いてはいたが、確かに難関だ。
先程から私達の後を追ってくる巨大な空飛ぶ魚がまた厄介だった。
私の魔法があまり利かず逃げるしか手がない。
隠形の術でごまかしごまかし進んで来たが、それも限界だ。
ゆるりと巨大魚が私達の居場所を嗅ぎ付けて近づいて来た。
どうしたものかと困惑していたら一瞬空の一点がきらりと光り…
大きな鍵の形をした杖が私達と巨大魚を隔てるかのように轟音とともに地面へと突き刺さる。
「え? 何これ? アンドラス兄さん魔法を使ったのかい?」
「いや、私は何もしていない」
大きな魔力が杖から放たれているのがわかる。何が起きようとしているのか。
巨大魚は一瞬怯んだかに見えたが、意を決したかのように私達の方へと迫って来た。
+ドン!+
轟音が耳をつんざく。
皆が思わず目を閉じ、耳を手で塞いだ。
轟音と共に断末魔のような声を巨大魚が発したからだ。
おそるおそる目を開ける。そこにはさっきまではいなかった巨大な白い生き物が立っていた。
「わわわわわわっ 新手のモンスター? もうどうしたらいいんだよ!」
イスカが慌てふためいている。無理もない。私とてどうして良いのか分からないのだから。
ハリはというと真っ青な顔をして立ちすくんでいた。
「ハリ?」
声をかけてみると。真っ青な顔をしたまま私の胸にしがみついて来た。
何時ものハリらしくない。ガタガタと身体が震えていたのでそっと抱きしめた。
「アンディ! お願い! 早く此所から…此所から遠く離れて!」
声が震えていた。
見知らぬ土地での転移術は何処に飛ぶか分からないのであまりやりたくはなかったが、
ハリの様子が尋常ではなかった事もあり、半ば博打で転移術を展開する事にした。
私が転移術を展開している間に白い生き物はその手で巨大魚を引き裂いて始末していた。
(ウィルとイスカがちゃっかりと落ちて来た尾の肉とヒレを切り取って採取していたのは流石と言うかなんというか)
そしてゆったりと振り向き私達の方を見て何かを呟いていたが、その瞬間転移術が発動した為に彼女(その体型から女性である事が伺えたので彼女と呼ぶ事にする)の言葉はあまり聞き取れなかった。
++++
転移術で大雪原の上層域に移動出来た事は幸運だった。
モンスターもあまりいない場所だったのは、地霊の力が強い地域だったからのようだ。
私の事を同じ地霊として受け入れてくれた事もあり、ここに拠点を置く事にする。
イスカが教えてくれた【カマクラ】という雪と氷で作ったテントのようなモノは寒さも防げてなかなか良いものだ。
しかし、彼女は何者なのか?
あの言葉はこの世界の言葉ではなかった。
そして、あれは確かに話しかけていた。
-シンシン…やっと みつけた-
私の腕の中にいたハリに対して……
++++++++++++
■グラキエス・ピスキー■
大雪原に棲む空を飛ぶ魚らしき生き物。正体は竜なのかも知れない。
氷属性で口から冷たい息を吐く。頭と背は硬い頑丈な鱗に覆われている。
動く物全てをエサとして認識しているようで、喰えそうと思うモノを察知すると襲いかかってくる。
基本群れないが、エサがあると察知するとわらわらと寄ってくる。いやしんぼだ。
名前はアンドラスが勝手に名付けたモノで意味は【氷の魚】
今回、ハーディは大雪原高域の何処かでカマクラを作って展開しております。
提供メニューはハーブティー【セラピア】とスープ【サーロス】のみです。
ご利用はお気軽に。
1〜3枚目はイスカとハリの記録メモ
4〜6枚目はアンドラスの野営地展開場所と新メニューメモ+α。
お借りいたしました(敬称略)
ンモレ【illust/88396651】
自キャラ
大地の巨竜アンドラス【illust/87860414】
ダソス・ウィル【illust/87860414】
赤毛のイスカ【illust/88040332】
月の眼のギネカ【illust/87860414】
何か問題がありましたらご一報くださいまし。
企画元様【illust/87556705】
2021-04-02 19:45:58 +0000