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聖が去ってから、紅魔館に残された依姫は頭を悩ませていた。
聖が襲ってきた裏、結局それがなんなのか見当もつかない状況だった。
後を追ったところで今の聖との力の差ではどうしようもない。
(依姫)「ひとまず瓦礫の片付けは大方済みました。」
(パチュリー)「ありがとう、こういう片付けはいつも咲夜に任せっきりだから助かるわ。」
(咲夜)「私も流石に壊れた壁の穴を塞ぐのはどうしようかと考えていたので・・・。とても助かりますわ」
衣玖さんは姉様のところにいってそのまま使いで紅魔館に来られないそうだ。
今回の件、姉様が知ればきっと何か動いてくれるはず・・・。
フランがリンゴをかじりながら、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
(フラン)「依姉様、リンゴでも食べて落ち着きませんか?」
(依)「そう・・・だね。」
(パ)「(あのフランが気遣いを当たり前にしてる姿を見れるなんて・・・オヨヨ)」
自分のかじったリンゴを差し出してスムーズに間接キスを狙ってくるフランが恐ろしい・・・。
八百万の力で大抵の問題はどうにかなる。
でも、物事全体の流れを変える力は私にはない。
あくまで、神霊を身に降ろして借りている力に過ぎない。
物事全体を見る小難しいことはいつも姉様に任せきりだったから・・・。
「比那名居天子の捜索の件。アタイが手をかそう」
不意に、開いた窓を見ると小野塚小町。三途の川の船頭が腰掛けて見下ろしていた。
(小町)「なんでお前が?って顔をしてるね。アタイは四季様の使いさ。あの方も私情じゃそんなに動けないからね。だから四季様の式として〜なんつって」
(フ)「・・・・アンタ、衣玖から行方不明になったって聞いてたけど。天子の場所でも知ってるの?」
(小)「いんや、わからない。つい数日前まで一緒にいたんだけど、ドロンしちまったんだわ。でも、手がかりを持ってきた。」
(依)「天子を見つける手がかりはなんでも欲しいけど・・・。」
小町は赤の他人というわけでもないからいいけど・・・。
ミスティアの女将さんの屋台でよく顔を合わせる仲ではあるし。
でも、四季映姫、幻想郷の閻魔の使いというのが何か引っかかる。
つい先日、地獄に天子が来ていないことを確認しに訪ねたばかり。
確かに閻魔として言えないこともあるのかもしれないけど・・・。
(小)「天子は、何者かに連れ去られた。で、そいつの痕跡が幻想郷のあちこちに残っている・・・だそうだ。」
(依)「痕跡?もしかして・・・」
思い当たる節があった。
ツクヨミ様との決戦のあと、三貴神でも姉様でもない大きな力の痕跡。
それは神霊の欠片のようなもので、神降しできる者でしかわからない。
あれは、明らかに意図的に残されていた。
私はその神霊の欠片を顕現させて見せる。
(依)「この痕跡の主が天子をさらった犯人かもしれない?」
(小)「そ〜いうこと。四季様から場所の目星をつけてもらったから、急ごうかねえ」
そういうことなら話が早い。
やることが決まればそうすればいい。
(小)「幻想郷1大きい湖。魔力の充満した森。月に最も近い場所。と聞いている」
(依)「霧の湖。魔法の森。・・・月の都。どうしてそんな周りくどい言い方をするの?」
(小)「さあねえ・・・?四季様らしくもないし、何かあるのかもねえ」
わからないことは後回し。
とにかくまずは一番近い霧の湖へ。
そう考えている時にはすでに霧の湖の中心に向かって飛んでいた。
(小)「相変わらず真っ直ぐだねえ依姫は。さて、アタイも久しぶりに腕を振るうかねえ」
(フ)「・・・・・。」
依姫の後ろを追って小町とフランも霧の湖へと向かう。
そんなフランの眼光は小町へと向いていた。
(フ)「(この死神、何をしようとしているのさ・・・。)」
小町は一度天子とともに行方不明になっている。
それも豊姫ですら見つけられないような形で。
考えている時間も惜しいのはわかる。
でも、あまりにも小町自身の説明が不足していのではないか・・・?
「止まれ。お前の持っている神霊の欠片を渡すんだ」
霧の湖の上空。
そこにいたのは、依姫がこれから探そうとしていた神霊の欠片を手にした夢子だった。
2021-03-08 14:07:12 +0000