【PFMOH】#10: 生死の境を隔てるものは

堕魅闇666世

前回illust/87878706
の流れを受けて、救急救命ツールの開発に没頭する
アリスillust/87721185
に代わり、職人頭のギムギニスが装置の開発への協力を要請すべく
余剰次元空間病院エデニアillust/87720266
のコグリ医師illust/87720320
(初描きがこんな顔で申し訳ないです(−_−;))
を訪問します。



「楽園来たれ(ベニタ・エデニア)」

つぶやいたギムギニスが目を見開くと、
見慣れた工房の風景は一変していた。

一面の静謐なる純白。
チリ一つない清潔な床の上に、ギムギニスは立ち尽くしていた。
「こりゃ、ワシのような煤まみれの老ぼれにはちと居心地が悪いわい」
今更のように、衛生面に何の配慮もない仕事着で
訪れてしまったことにいささかの気まずさを覚える。

音もなく近づいた歪な人影に、衣服の煤を払っていた
ギムギニスは気づかなかった。
「余剰次元空間病院エデニアへようこそおいでくださいました。
患者様・・・では、ございませんね。
ご用件は何でございましょうか」

「・・・ああ、すまんな、君が連絡を受けてくれた
ルビカ・ドゥルサウ君だね。
先刻、延命装置について尋ねさせてもらったギムギニスだ」
ルビカの異様な風体に一瞬たじろぎつつも、
ギムギニスは要件を述べる。

「正確には、私は分体にすぎませんが。
ギムギニス様ですね。院長にはお話を通しております。
どうぞ、こちらへ」
純白の建造物の奥へ、ギムギニスは誘われる。

「はじめまして、ですね。
アトリエ・アリスリデルの職人頭、ギムギニスさん。
ワタクシが、当院の院長を務めさせていただいております、
コグリ・ドゥルサウと申します。以後お見知り置きを」
「こちらこそ、時間をわざわざ割いていただき感謝する。」

挨拶もそこそこに、ソワソワと興味を隠しきれぬコグリ医師が
やや食い気味に本題に触れる。
「それで?お話に伺いました人工心肺代替装置というのは?
現物は?お持ちでない??」
ギムギニスは即座に、携行していた転送庫から試作品を取り出した。

「おお・・・おお、これが!
生命の神秘の中枢たる心肺の模造品!
我々が持つそれとは似ても似つかぬ無骨な姿!」
すぐさま試作品に飛び付き、その構造を調べはじめた
コグリ医師に、ギムギニスは事の次第を説明する。

「ウチで雇っている傭兵が、山岳救助隊のライナー殿を
護衛することになってな。彼への協力の一環として、
救急救命装備の開発をすることになった。
うちの開発主任の嬢が一晩で書き上げた図面を
もとに組んだのがこれなんじゃが・・・
残念ながら、駆動時間に限界がある。」

「なるほどなるほど。ライナー君。
彼もまた、生命を愛してやまぬ素晴らしい若者だ。
当院でも、何度も彼が救助した人物を預かっていますよ。」
会話の合間も、視線は装置に集中している。

「それともう一つ、問題が・・・
「それで、心肺停止状態の患者の
体に一時の代替物としてこれを取り付け、
救急救命医療へとつなぐための装置として利用したいと。」
何度も繰り返し頷きながら、
早速自分の体に取り付けてスイッチを入れるコグリ医師。

「ンンッ・・・おおお!感じるッ!!
感じますよ!生命の力強い息吹を!
私の中に新たな心臓が芽生え!
ヒューッ!ヒューッ!!
あ、新たな肺が、強力に酸素を
をををををををををををををを」
「院長、バイタルサインが異常です」
予想外の行動に反応が遅れたギムギニスが、
急いで装置をひっぺがす。

「ハァ・・ハァ・・・・
こ、こんな感じでな、健康な人間につけると
過呼吸と高血圧でむしろ生命が危うい」
「フゥーッ、フゥーッ・・・
ウフフ!ええ、よく分かりました!!
この装置に足りないのは、
患者の状態に合わせた出力の最適調整!
お任せください!当院が誇る膨大な臨床データを総動員して、
必ずやこの装置を実用レベルに調整致しましょう!!
素晴らしい・・・これは!間違いなく!!
ワタクシの夢、『人工不老不死』
へとつながる大いなる一歩ですよ!
ウフ!ウフフフフフフフフフフフフフフフ!!!」

トントン拍子で話がまとまったことに、
何故だかかえって不安を覚えるギムギニスであった。

#Pixiv fantasia MOH#【アトリエ・アリスリデル】#【余剰次元空間病院エデニア】

2021-02-19 00:43:32 +0000