春になるまで、待っててよ【illust/86796337】
❁小鳥遊 友尋 - たかなし ともひろ
年齢:18歳/身長:181cm/性別:男/誕生日:4月9日/職業:高校生/僕
❁ 3/2 * 素敵なご縁を頂きました ❁
✿天宮 春翔君✿【illust/88073014】呼び方:天宮(初期)⇒春翔・ハル(親友以降)
高校3年になってすぐの、或る春の日。
俺の居るクラスに転校生がやってきた。柔和な雰囲気の男だった。
名前は"天宮 春翔"。名前もまた、ソイツの雰囲気にピッタリだなと感じた。
俺は何の気なしに隣の席に座った転校生に声を掛けた。
「俺、小鳥遊って言うんだ。今日からよろしくな、天宮。」
それが、すべての始まりだった。
天宮はどうやら、自分の考えより他人の意見を優先する傾向にある。
それを喜んでやっているのなら良いが、そんな様子にも見えない。
ホントは言いたいけど、自分の中でぐっと堪えて我慢してる感じがしたんだ。
天宮には最後の高校生活を悔いなく、楽しく過ごして欲しい。
余計なお世話かもだが、俺は天宮が少しでも自分を曝け出してくれるようになって欲しくて
いや、それはちょっと違うな…"俺が"天宮の正直な一面を見たくて、
「なあ天宮、放課後空いてる?寄り道しようぜ、どこ行きたい?」
「天宮はどう思う?俺はお前がどう思ってるか知りたいんだけど。」
そう言って、殻に閉じこもりがちの、天宮の手を何度も引いた。
それから天宮…いや、"ハル"は変わった。
自分の意見や自分のことをよく話してくれるようになった。
友達も増えて、笑顔も増えて…俺は自分の事の様に嬉しかった。
そして俺自身、ハルと一緒に過ごす時間はすげぇ楽しくて、居心地良くて、
ハルと関わる事が自然と多くなっていた。
俺の中では間違いなく"親友"と呼べる存在で、ハルもそう言ってくれた。
この時の俺は純粋に、親友が増えた事への喜びを感じていたんだ。
しかし同時にある一種の感情も芽生えていたが、この時はまだ気づかなかった。
気付けば俺は無意識にハルの事を目で追ったり、二人きりになると変に緊張したり…
今まではそんな事無かったのに、気づけばハルの事ばかり意識するようになっていたんだ。
何故俺はこんな風になってしまったんだ?でも答えは見つからなくて
どうすれば良いか分からなくて…俺はハルを無意識に避けるようになってしまっていた。
……あの時までは。
俺は偶然、ハルが女子に告白されてる場面に遭遇してしまった。
いつもの俺なら、陰でこっそり応援していたと思う。でも、この時は違った。
"嫌だ"…と、思った。
ハルが誰かの特別になってしまう事に酷く嫌悪してしまったんだ。
逃げ出して荒くなった息を整えながら、自分の感情や思考も整理した。
他の誰にも抱いたことのない、ハルにしか抱かないこの想いの正体は
「『恋』……ははっ、そうか、俺…ハルの事を……」
俺は、乾いた笑みを浮かべながら、胸をぎゅっと握りしめた。
それから、この気持ちをどうすれば良いのか考えながら過ごしていたが、
気を引き締めてこれまで通り肩を組んで声を掛けようとしたら避けられた。
それ以降、俺は何度かハルに話し掛けようと試みたけどその度に避けられてしまって
でも他の友達にはいつも通り接していて…俺の心は締め付けられて、酷く苦しくなった。
俺、ハルに嫌われたのか?俺がハルに余所余所しくしてしまったから?何で?どうして?
そう自問自答を繰り返して、俺は毎晩毎晩膝を抱えて悩み続けた。
好きな人から避けられる事がこんなに苦しいなんて、俺は知らなかった。
そして俺は、そんな日々にとうとう耐えられなくなった。
いつも通り避けようとするハルの腕を、強引に掴んで引き寄せて。
俺はハルに今まで抱えてた気持ち、感情…全てを思いのままに打ち明けた。
俺が全てを言い終わった後に、ハルはそっと俺の手を取った。
俺の手を掴んだハルの手は、この世のものとは思えないほど冷え切っていた。
そこで俺は、前にハルが話してくれた"雪明村の呪い"の事を思い出した。
でも確か、体が冷たくなるのは『恋』をしたらって言ってたような…。
ハルを見る。ハルは困った様に微笑みながら握っていた俺の手に指を絡めた。
まさか、そんな事ってあるのかよ…お前も俺と同じ気持ちだったって事か?
俺は逸る鼓動を抑えながら、ハルをそっと抱きしめた。氷の様に冷たい体温を感じていたくて。
互いの気持ちを確かめ合ってからは、恋人としての思い出も沢山作ったな。
呪いの関係上、言葉で愛を示す事は出来なかったが、
その分行動でハルへの愛を伝えたし、ハルもそれに応えてくれた。
でも、ハルを抱きしめるたびに伝わるこの世のとは思えないその体温で
本当にハルは大丈夫なのかと、不安にも感じた。
でも、とうとうそれ以上の事が、高校生活最後の日…卒業式の後に起きたんだ。
ハルは俺の目の前で凍った。俺への愛の言葉を残して。
ずっと、ずっと言いたかったけど言えなかった、たった二文字の愛の言葉。
お前も、自分が凍ると分かっていながら、その言葉をずっと俺に伝えたかったんだな。
「 俺もずっと ずっと 好きだ ハル。 」
俺は、ずっと言いたかった言葉を口にして微笑んだ後
凍った想い人に手を伸ばして、そっと口付けを落とした。
その後、俺は一頻り泣いた。
*
俺はハルとの思い出を思い返していた。
こうやって思い返すのは、もう何度目か分からないが。
あれから、10年の時が過ぎた。
俺はすっかり大人になったが、ハルはあの時のまま、凍っている。
「ハル」
俺は窓の向こう側で氷漬けになったままの想い人の名前を呼ぶ。
「俺は、いつまでも、お前の事を待ってるからな。」
End 05 「春になるまで雪解け水を待っててよ」
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2021-02-13 15:01:42 +0000