あれから、幾年かの月日が流れ、私たちは大人になった。大学生活と「Bitter Mocha」を掛け持ちしている時も、成人にはなっていたけれども社会人でない分は、それは大人とは言えなかったと思う。社会に出て分かる。自分は子供だったと。自分で選んだ仕事ながらも、でも今の自分、或いは自分の選択に充分には納得できない。あの頃思い描いていた未来や夢とは、果たしてどれ程の距離があるのだろう。時間は、戻ってもくれないし、止まってもくれない。◆◆ Jazzバンド「Bitter Mocha」の活動は継続している。あの日、バンドを解散することを強く止めたのは、私。智華さんの愛した「Bitter Mocha」が無くなったら、千瀬ちゃんは母親との繋がりをひとつ失うことになるから。でも、逆に、「Bitter Mocha」があることが千瀬ちゃんを苦しめることもあるかもしれない。でも…でも、千瀬ちゃんは私たちに言った。「1人で来てもいい年になったら、遊びにくるね」◆◆ 丘の景色は、変わらない。本当の意味では長い月日のうちには変わってゆくものだけれども、幾度か四季が巡り、樹々が成長し、或いは入れ替わっても、いつも、ただそこに在る。青みがかった緑色の、終わることのない風と共に。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2021-01-03 15:08:12 +0000