――ああ、遠くにみえたんじゃない、初めから遠い存在だったんじゃんか。
あれから彼等はますます眩しくみえて、夜釣りの漁船のごとく大海を割って行く。
そもそも、自分の小舟では追い付けるはずがなかったのだ。蔦のように絡まるだけの心剣では、彼等のような輝きは放てない。
行き止まり。
それなら。
ウチに出来るのは、その航路を後押しする役目っしょ。
己と向き合いひとつの道筋を得た時、絡丸は朝日に煌めいたように見えた。
「アレっすわ、デバフ職のほうが自分に向いてるみたいな?まー牽制はウチに任せていいとこ見せてよホラ」
「実感ないけどさ、2年生ってことはウチら先輩じゃんね……時の流れ激流すぎてヤバいっしょマジで」
◆三宅 棗(みやけ なつめ)
学年:2年 性別:女性
年齢:17 身長:162cm
◇進級しても相変わらずゲーマーな2年生。「ゲーム」と名のつく物ならば何でも好きだし関係なくてもゲームと言えばよく食いつく。
態度も表情もいつも無気力、気だるげでやる気がなさそうだが通常運転。
自分と心剣に出来る事への答えを無気力なりに得たのか、ただ適当にこなしたり手探りのように好戦的だった去年と比べ、冷静に戦いに臨んでいる。とりあえずサポートに回ったほうが性格的にも心剣的にも相性がいいと分かったらしい。
◆心剣:絡丸(からまる)
身の丈ほどの長さのハルバート型心剣。刀身に大きな変化は見られないが、リボン状のパーツはより大きく丈夫になり、複数本を安定して動かせるようになった。
手を2つ叩くと具現化する。やはり必要ないが「ログイン」「ログアウト」宣言は欠かさない。
最近通りすがりの知らない一年達に「ひもQついてる」と笑われたのを地味に根に持っている模様。
◇能力:烏落→白鯨落(はくげいおとし)
リボン状のパーツを一気に伸ばして対象に絡みつく。拘束したり武器を払い落としたり、どちらかというと妨害に向いた能力。鍛練の甲斐あって劣勢でなくとも扱う事が可能になった。
伸ばす本数が多いほど切れやすかった去年までと違い、動かすリボンを10本までに限定し一本の強度がロープ並までに増したため、そう簡単にはほどけなくなった。
◇能力(NEW!):深海回帰(しんかいかいき)
能力:白鯨落で絡みついた時に任意に発動できる。対象を中心に「海中に引きずり込まれる」幻覚、それに伴う「息苦しさと水圧」を錯覚させる場を展開する。絡んでいるリボンの数が多いほど水深はより深くなる。
莫大な気力と体力を消費するようで効果時間は長くてまだ10秒と少し、棗が気絶するか絡丸がほどかれると効果は強制的に終了する。あくまで幻なので水浸しになることはない。
恐らくはこちらが絡丸の本来の能力であると思われる。
……なお人数が増えるに従い体力の減りも早まるようで、海に行ける最新のVRゲーム的感覚で友達複数人に対して行使したところ一瞬で保健室送りになった。
◆交友関係:
○桧山 昇くんillust/84624222
相変わらずおやつ会に入り浸りまくり。たまに実家から送られてくる海鮮を焼かせて貰ったりしている模様。今年こそはリボンもマシュマロも焦がさないと主張しているがその日のうちにマシュマロ焦がした。
「うわ。マシュマロクリームとか何それめちゃ気になるっしょ食レポして食レポ」
「じーちゃんが友達と分けて食べろってさ。てことでここに海老あるけど焼く?」
「今年の絡丸は一味違うんすわ。何しろ簀巻きにして海にドボーーーンなんで……って幻覚だと意味ないじゃんね」
○春隣 陽くん illust/85157358
おやつ会仲間。進級してなお日を追うごとに眠気が増していく様子にますます心配が加速中。コーヒーでは対して効果がないと思ったのか、一緒になる時にはエナジードリンクを持参するようになった。
「ゲーセン行く約束したっしょ、ねえ……おーーきーーろーー」
「……まさか冬眠するんじゃないっすよね春ちゃん……されたら寂しいよウチ」
「目覚ましに1秒だけ海行っとく?ちょっとは眠気に効くかもしれないじゃん」
○氷宮 大吾くんillust/85157404
おやつ会仲間。ゲームが得意でなくても楽しめるよう、一緒に遊ぶ際は見映えするプレイングを心がけるようになった。なお勘違いだと説明されるまで本気で熱エネルギーの置換で強くなっていると思い込んでいた。物理学マジで分からない。
「えっアレ勘違いなんすか!?いやでもだいぶ速く走って…………マジすか……」
「この前帰省したついでに実家から使ってないルアーも持って来たんすわ。海用だけどいる?」
「仮に大吾君に深海回帰したとしてさ、1号2号振り回されたらさあ、海冷えて凍るんじゃね?(※幻覚なのでなりません)」
編集中……
前回(2019冬の陣)→ illust/78059102
2020-09-26 15:47:11 +0000