「おっ……とっと。これ以上近づかんでください、頼みますよ……僕もあんたも諸共しんどいことになるんで……冗談じゃないんでね?」
「ちゃんと処方は守って飲んで!!!!いいですか?薬ってのは調剤も飲み方も一つ間違えたらやべぇもんなんです、自己判断は絶対ぇいけねぇ。そう、僕のようになりたくなければ…………」(遠い目)
(なんだあの薬材は……人間の存在故の発展か?120年の時が成した進歩なのか?どうやって使う気なんだ?あ〜〜クソ、もっと近くで見てぇなぁ……)
「僕……この薬効を失くしたら……かわいいお嫁さんつくって…………オアシスで水遊びすんだ……」
▼シトゥ(Sito)
男性/144歳(外見年齢20代半ば)/174cm
一人称:僕 二人称:あんた
種族:魔法使い(鳥の姿をした精霊を祖に持つ)
特技:薬品調合
所属:ムーンイエローデザート
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▼9/24.素敵なご縁を頂きました!
カデットブルーラグーン ニナ=プラッシュさん【illust/84074340】
はぁ?お嬢さん、今なんて?
そう言葉を返すより早く、目の前の緑髪の少女は僕の手を掴み砂漠の道の上をずんずかと進む。
僕の自業自得で得てしまった体質故のプロポーズ。これは条件反射みたいなもので……愛の気持ちなんてカケラもねぇんです。だから求婚したところで、こっ酷く振られるかビンタされるか引かれるか哀れみの目で見られるかが返ってくるリアクションの常なわけで。
ところがどっこい、今日のプロポーズ相手の反応は今までにないものだった。少女は大きな角を揺らしながらうきうきとした足取りで……いやいやいや待ってくれ、どこに行こうとしてんの?は?両親への挨拶ぅ!?想定外すぎるんですけど!?
これまでのビンタの数々はそれはもう痛いものだったが、こう簡単に受け入れられるのもそれはそれでだめだろ!?
引き摺られる中でなんとか少女の手から紙袋を奪い返し被り直し、少女を引き止めようと思わず声を荒げた。
「ちょっとお嬢さん、こんな見ず知らずの野郎を運命にすんのは早いですってば、あんたまだ若いんだから!」
「いやまぁ、確かにあんなこと言った僕が言うのもおかしな話なんですけどぉ!そうじゃなくてぇ!!」
知らないならこれから知っていけばいいでしょ?なんて、らしいことを言われてしまうと、僕も一体どう返せばいいのやら。兎にも角にも、こんな中身のない求婚で娘が男を連れてきたとあっちゃ、この子が良くたって両親に殺されるにちがいねぇ!
命の危機を感じた僕は少女の手を振り払い、通りすがりに空を飛んでいた鳥の仲間を呼び止め、飛び乗ってその場を去ったのだった。
後ろから少女の怒声が聞こえたが、こっちだってなりふり構ってられねぇんだ。勝手で申し訳ねぇんですけど、今日のことは忘れてください! ……運賃として大量の穀物を要求された僕の懐の寂しさが免罪符ということで。
***
でも、人生そう簡単にはいかないわけだ。そんなこと知っていたはずだろ、僕。
あれから数日後。いつものようにうっかり通りすがりの女性にプロポーズをかましていたときだ。後ろからあの日聞いた怒鳴り声が飛んできた。振り向くと、例の少女が肩を震わせ、こちらを睨みつけているじゃぁないですか。嫌な予感!
「待て待て!浮気でもねぇですし、愛の告白でもねぇ!!というか頼むからこれ以上近付かんでくださ……『愛している!!結婚してくれ!!!!!』ナァ゛ーーーーーーもぉ!!」
やけくそ!
この混沌とした状況から脱するべく、「両親へのご挨拶」の再来を回避すべく、僕は少女の手を握って走り出した。紙袋を被り直したから途中何人かとぶつかったが、とにかく音がない方へ。
めちゃくちゃに走った末、ひと気のない小さなオアシスに辿り着くと、ふたりしてへたり込んだ。しかし少女は元気なもので、肩で息をしながらも先程の続きのように、あの日逃げたことや浮気現場やらについて僕を責め立てるものだから、僕は必死に己の体質について弁明。
すると、少女、号泣!!
「すぐに説明しなかったんで本当に悪かったです、ばかはごもっともで!これは全部僕の自業自得で……逃げたのも不誠実で……すみませんでした!だから、泣き止んでくださいよ」
そう、だよな。慎重に出歩いたって限界があって、結局、いろんな人に迷惑かけちまう。薬効を解く方法だって一向に見つからねぇ。やっぱり外出はもうしばらくやめて……と頭を掻いていた矢先。少女が言い放った言葉に、僕は大いに驚かされたのであった。
***編集中
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▽4期からではありますが、素敵な世界にお邪魔します!問題等ありましたら、pixivメッセージにてご一報下さい。
▽企画元-恋をするなら異世界で! illust/78513489
2020-09-05 10:46:42 +0000