※倫理観に問題のある描写が含まれるR-15GL企画となります。
幕引きまでそばにいて【illust/83364755】
「死は救い?ええそうね、あなたにとっては。
私にとってあの子の死は絶望の始まりでしかなかったけれど。」
🐰兎束彩世(トヅカアヤセ)/18/158/HN:ウサギ/女子高生
一人称:私、二人称:あなた
ごく普通の女子高生。品行方正、問題行動は一切なく
成績も平均以上の模範生徒。
大切だったあの子が亡くなって少しだけ歯車が狂ってしまった。
ただそれだけのこと。元来の快活さは形を潜め、自暴自棄になっている。
死にたい人間の気持ちは理解できないが止めようとも思わない。
🐰素敵なご縁をいただきました…!
ある種の共感と相容れぬ思考の人
神城理沙子さん【illust/84030769】
死んだあの子のHNを借りて開き慣れたサイトを巡る。
爪の先程の共感も得られない文字の群れの中でふとスクロールの手が止まる。
『Corpse』
誰の返信にも反応を返さず、
まるで物語のような書き込みをする人。
嘘か真かわからないけれど少しだけ共感を覚えた人。
異彩を放つその書き込みに興味をもったのは必然の偶然だった。
✑〜
「この本…好きなの?」
きっかけはあなたのこの言葉。
足踏みをした1度目の春。走り出した3度目の春。
「ねっねえ!神城さん!」
重なった声に動作に
「えっと……神城さん、昨日のあの本が好きならこっちの本もきっと好きだなって……神城さんも持ってきてくれたの?」
顔を見合わせて微笑みあった。
共通の趣味が見つかって、話も弾んで、距離が近づくのはあっという間。
「私たち似たもの同士ね」
✑〜
距離を詰めるのは怖かった。裏切られるのが、おいていかれるのが怖いから。でも、
「私と友達になってよ、りさ」
もう一度信じてみたいから
「すっごく子どもっぽいこと言っちゃった!もう!笑わないでよ」
あなたならきっと私を裏切らない。
✑〜
お願いっと手を合わせて
「ねえりさ、今度の課題一緒にやって!
しょうがないわねって言いながら準備してくれるって知っているから、前の席に荷物を移動させてりさの机を覗き込む。
机の上の原稿用紙、並ぶ単語に、文体に
(あれっ……?)
私はこれらを知っている
(Corpse……?)
そんなことない。
そんなはずない。
りさがあのサイトを使ってるなんて
✑〜
りさは未来の話をしない。
私は未来の話をやめない。
私はりさを信じてる。あなたと未来を歩みたいから。
それでもあなたが『死』を救いとするなら…その時は……
✑〜
卒業式が終わってりさに手を引かれて辿り着いた中学校の屋上。
目の前にかざされたスマホ画面。
見慣れたサイト、見慣れた文章。
やっぱりあなたが『Corpse』なのね。
あなたは今日、ここで死ぬために生きていた。
あやは私の読者だったの?というあなたの声。
そんなことはどうでもいいの。
「おちるの?」
今ここで、私の目の前で。
いいよ、大丈夫。
私、決めてるの。あなたが望む最高の『読者』になるって。
どんな幕引きも見届けるわ、それが私の役割だから。
それでも……それでも…私は……
✑〜
抱きしめた腕から伝わるぬくもりに涙がでた。
『死』って怖いのよ。昨日までの当たり前が全て消えてしまうから。
何も告げられない『死』は自分の存在がその人にとって小さなものでしかなかったと突きつけられるから。
私の存在でりさが生きようとしてくれている。
その事実がたまらなく嬉しい。
「卒業旅行、今から探していこうよ」
「紗穂ちゃんとあの子のお墓参りもいこうね」
「大学デビューもしちゃう?……嘘よ」
「ねえりさ、全部付き合ってよ」
あなたが未来を生きてくれる。
その充足感が私を満たす。
「また明日ね」
✑〜
時計の針がチクタクチクタク。
あなたの姿は見えなくて。
もうねぼすけさんなんだから!
……
本当は知ってるのよ、でも信じたくないの。
まわる赤色灯、群がる人々
「トラックが人を轢いたんだって」
画面の割れた見慣れたスマホ
「こんな幕引きをさせるくらいなら、
あのときあそこで死なせてあげればよかった」
最高の『読者』になれなかった
「私のせいだ」
うそつきは私。
✑〜
色褪せた世界で今日も生きる
あの子のくれたたった一言
「あやと一緒ならキャンパスライフも楽しいでしょうね」
その言葉が私を生かし続ける。
「はじめまして、Corpseです」
あなたの名前を借りて
「あなたの望む幕引きを教えて下さい」
あのときなれなかった『読者』になる。
本当に今すぐにでも消えたいの。
でも駄目ね、あの子が自分の望んだ幕引きを迎えられなかったのに、私だけがきれいに幕引くなんて。
『死』は救いじゃない。でも私の罪は『死』でしか償えない。
私にとって、『死』は赦しだ。
「きっとろくな死に方しないと思うわ」
『読者』の私はただひたすらに『作者』の幕引きを見守る。
時にその背を押しながら。
でもね、それも明日で終わり。
長かった大学生活の終わりとともに私の償いも終わるの。
4年よ、4年。
あのとき自分を赦せなかった私へ、もう赦されたい、赦してほしいのだ。
私も『作者』になりたいの。
だから『読者』は今日で最後ね。
「はじめまして、Corpseです。あなたはどんな幕引きを……‥…えっ……?…」
じわじわと自身から溢れる紅に目の前の『作者』を見つめる。
泣き腫らした目のその人。呟く口から微かに聞こえる「妹」という単語。
なんだ
そういうことか
思わず笑い声を上げてしまって目の前の人が驚いたのを感じる。
とぶように後退りしたその人へそっと微笑んで見せる。
あなたは私だ。
あのとき私がなれなかった『私』だ
ひとしきり笑って腹に刺さった刃物に手をやる。
あなたは何も悪くないわ。
私だって『あの子』が『妹』が死んだとき原因がわかってたらそうしただろうから。
震える腕でハンカチを取りだし、柄を握る。
これで目の前の彼女の指紋は消えただろうか、
そんな簡単にはいかないだろうな……
目を瞑って、刃物を抜く、そして、再び、深く、刺す。
何度も、何度も繰り返す。
私が赦せなかった、私を殺す。
これは私に似合いの幕引き。
ねえりさ、私も空を飛べなかったわ。
「やっぱり私たち似たもの同士なのね」
🐰何かありましたら各種ツールよりご連絡ください。
随時キャプション編集します10110
2020-09-03 12:08:54 +0000