ﾋﾊﾞﾘｯｸｽ一方その頃
タイちゃんギンちゃん・本店の厨房にて…。
「タイちゃん！辛そうなやつ持ってきたよ！」
「た、タイちゃんって呼ぶのはやめなさい……妙にムズムズするから……」
「あっ、ごめん！でもギンギツネの事を“ギンちゃん”って呼んだら、すごく嬉しそうにしてたけど……」
「そ、そうなのか……ちなみにジャッカルは何を持ってきたんだい……？」
「デスソースとラー油！絶対カレーに合うよ！」
「ああ……君はあのデスソースをチョイスしたのか……」
「これヤバイよね！一口食べただけでヒーヒーくるよ！」
「ヒーヒーくるのをお客さんに提供できないよ……私が食べたらどうなることやら……」
「やっぱそうだよね～……じゃあ一旦保留で！」
「もう一つはラー油か……ちょい足しすればほどよい辛さに仕上がるかな……？」
「あっ、ボクが持ってきた調味料は好きなだけ使っていいからね！いや、むしろ使って！」
「そ、そうだね……辛さを克服するって言ったんだ……」
「ところでタイリクオオカミ、なんでそんなに辛いのが苦手なの？」
「えっと……うん、要するに……」
「ん？」
「痛いのが本当に嫌でさ……」
「あ～……たしかに辛さは味覚というよりも痛覚だからね～……」
「字を見て分かると思うけど、痛覚は“痛い”なんだよ……」
「でも、いち味覚として受け入れれば問題なく食べられるんじゃない……？」
「受け入れるのには時間かかりそうだ……口を刺激されるのがどうも好きになれなくてね……」
「ボクも2号店のみんなも、あの刺激が好きなんだよ！結構クセになるし！」
「そうか～……とにかく、ゆっくり慣れるしかないのかな……」
「うん！ゆっくりでいいから！」
「本店の店長だからね……弱音なんて吐いてられないよ……」
「あっ！そういえば昨日、2号店のカレー食べてきたよ！」
「なにっ？本当かい？」
「味担としてね！しっかりと味を噛み締めてきたんだ！」
「ちなみに辛口カレー……？？」
「そう！その通り！！」
「何か分かったかい……？何でも話してくれ！」
「辛口カレーの3倍増食べてきたんだけどさ～」
「3倍増……よく食べられるじゃないか……」
「カレーの味よりも、辛さの方が勝ってた感じがしたな～……でも美味しかったけどね！」
「辛さの方が勝ってた、か……」
「でさ、ボク一つ思ったんだよね！」
「ん？」
「香辛料を有効活用してもいいんじゃないかと！！」
「こ、香辛料を……？？」
「ほら、何だかんだ言ってうちの店には色んな香辛料あるでしょ？？」
「ああ……隠し味用に私が何種類か買ってきたやつだね……とは言いつつ封切ってないのばっかだけど」
「それを有効活用すれば味に深みが出るって……ブチハイエナから教わったよ！研修の時に！」
「そ、そうなんだ……つまり、ただ辛いだけじゃなくて、しっかりと味も生きてるカレーにすればいいのかい……？」
「イエス！やみつきになるカレーに仕立て上げよう！ねっ！」
「分かった……的確なコメントありがとう……」
「えへへっ、どういたしまして！」
「こういう時に味見担当が役立つね……ジャッカル、見直したよ」
「よし！せっかくだし、ボクが持ってきた調味料をカレーにかけて食べてみよう！」
「じ、ジャッカル、ちょっと待ちなさい……」
2020-07-23 20:56:33 +0000