死んだらあなたと繋がれる。|illust/81100539 ✦主催様承認済
✤20200615素敵なご縁をいただきました
色市 八夜くん|illust/81979192 (色市さん→八夜さん→八夜)
今日も猫が鳴いた。
今の私にはただそれだけが救いだった。けれど何年この日々が続くだろう。
けれどそれには触れられない。心が壊れるのも時間の問題だと、自覚はしていた。
「……よかった、今日も来てくれたのね。いつもより遅かったから心配したわ。
なんて、分かってるかどうかもわからないんだけど。ちゃんとご飯は食べれてる?
……ん?あれ。今日は君、誰か連れてきたの? 珍しいこともあるわね……。
……気のせいかしら、なんだか、私のことを見ているような気はするけど――」
盛大な独り言をぽつぽつと言っていないと、どうにも辛い。
饒舌な私を見て、猫が連れてきた影はにこりと笑って、こんにちは、と言った。
そのまま、猫好きなんだ、俺も好きでね、と続けて猫を優しい手つきで撫でる。
何かまだたわいもない話をしてくるけれど――あれ?
「――ん? あれ? え? あの、本当に私? 聞こえてる? ……は?」
困惑し、思わず警戒してしまう。というか、そもそも誰。
私が見えてるし話しかけているのは何故。危ないよ、って、別に……。
初めて見える人がいたというのに、人間、実際にそうなるとただ慌てるだなと思い知る。
「…………えっと、気にしない、で。いつも、ここにいるから平気よ」
結局絞り出すように声を出した言葉は、結局そんななんでもない事だった。
「……どこかで見たことある? さあ。それは思い出さない方が私は嬉しいわ」
名前を検索すれば一発な気はする。こんな社会だ、すぐ調べられる。
それに、電車で撥ねられて死んだ人間を思い出してもしょうがない話だと思う。
正直、ネットの海を漁れば最悪死体が出てきかねないと思う。
全力で拒否をしたが、彼は言うことを聞いてくれるのか。
「だから、私は既に死んでるの。この子ですら触れないわよ。死人よ死人」
どうも、普通に話しかけてくる分、彼にとっては透けていない様子らしいけれど。
見えても触れられない事には変わりないらしい。
手を伸ばしても、全然触れない。――少し、また虚しさがあった。
「君、猫みたい。犬気質の猫。……それは犬じゃないかって? それでも猫なのよ貴方は」
何故かって? いう気はないけど、君はやはり気まぐれなところがあるから。
肝心な所は隠す、それもちょっと露骨に下手ではあるんだけど。
完全に犬ね、なんていうには、ちょっと君は違う気がして。
……まあ私から見た話なのだけれど。
「そう。……その。つかぬ事をお聞きするけれど……その首輪、猫とかのものかしら」
猫だと思ったのは、君の側にはもう一匹、猫がいるから。
君には見えていないだろうけども、随分と懐いている子がいる。
それは、君に認識されていないことも、きっと気づいていないのだろう。
――その子は、嬉しそうに鳴いた。
「……ねえ、冥婚って知ってる? 死者と生者の結婚っていう……アレ」
あまり仲良くしすぎると、連れて逝きそう。
そう呟いたが、聞こえたかどうかはわからないが――。
どうしても、やっぱり一人が怖かった。
あれだけ愛した一人の時間が、耐えられなくなったのがわかる。
ゆっくり過ごしていた時間も、もう二度と――一人では、無理だと。
「……私は死んでいる。八夜は生きている。
――私は、貴方を番にして、連れて逝きたいと思う。
それでも、貴方には、生きる権利がある。死んでないもの、当然よね。
だから、早く決めて。早く、拒絶してくれないと……諦められないから」
触れられるようになってしまったら、
――私はきっと君を離せない。
✤人物
篠塚 林檎 shinoduka ringo
事故死 | 享年18歳 | 165cm | 女性
一人称/私 二人称/君
2年前、電車を待ってたホームで誰かにぶつかって転落、そのまま轢かれ死んだ。
家族に会いたいとか友達に会いたいとかは、思ったよりどうでもよくて。
ただ、死んでしまったにも関わらずまだ彷徨っている自分に悲しんでいる。
生前は写真など一人でのんびりすることが好きだったが、
亡くなった後は一人が怖くて仕方なくて、人通りのあるところにこっそりいる。
事故死した為か、賑やかな場所でも建物の影にいたり、少しはなれた路地裏にいたりと、と車道には行きたがらない。車嫌い。
どうせ誰も気づいてくれないのだけれど、と、小さな悪態をつきながら、最近は見えないのはわかっているが、猫と戯れては気落ちしている。
猫はわかってるのかわかってないのか、定期的に現れては去っていく。今はそれが救い。
気付かれない日々にいつ心が壊れるかと最近は考えてしまう。
ちなみに赤毛は親譲り。本人はあまり気に入ってない。
「……貴方、私が見えるの? ……そう。幽霊よ。死んでるの。化け物よ」
「……私が何かできるとでも思う? ホラー映画もため息つくほど何もできないわよ」
「また、来てくれる? 会ってくれる? ……ふふ、大丈夫よ呪わないわよ」
冥婚に関しては、相手が頷くならば連れて行きたい心情でいる。
生きてる人間だから、とか億劫になることは1ミリもないが、
身勝手で言っていることなのは自覚しているので相手の意思を尊重するつもり。
……ではいるのだが、実際直面したらどうなるか自分でもわからない。
✤既知関係はご自由に
何かありましたらメッセージでご連絡ください
「ねぇ、私と心中して頂戴。苦しくないわ、大丈夫よ。……冥婚なんて、そんなものよ。」
2020-06-06 03:46:31 +0000