▼死んだらあなたと繋がれる。【illust/81100539】
葉月 初(はづきはつ)
享年18歳(高校3年生)/162cm
一人称:私 二人称:あなた 三人称:〜さん、(親しい人のみ)呼び捨て
【補足】
母は幼少期に病死。母を愛していた父は、その死を認めなかった。
それ故に精神的におかしくなり、自身に対してネグレストをするようになる。
色々諦めていたが、一途に愛し続ける父、その愛を一心に注がれる母に羨望を抱いていた。
父の影響により、ひたすら愛が重く愛に飢えているため、無意識に誰かに愛されることを望んでいる。
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▼6/8 素敵なご縁に恵まれました!
ロミオさん【illust/82137949】
あそこに、花束が置かれていました。可愛らしい小さな花達が丁寧に供えられていました。 彼処は、私が轢かれた場所でした。
流石に事故が起きた形跡は消えていましたが、未だに私の死を弔ってくれる人がいるようです。…きっと、お父さんではない誰かなんでしょう。そんなことを考えていた日の話です。
「───もしかして、私に話しかけてる?」
お迎えでも来たのかと思ったけど、違いました。
天使にしては軽薄で死神にしては陽気な男の人が、そこにいました。
初めて生者に話しかけられました。
私が死者だと気付いていませんでした。
とてもよく口が回って、人懐っこい笑顔を浮かべる人でした。
「無視したわけじゃないよ。久々に話しかけられたから、すぐ反応できなかっただけ。ごめんね」
「うーん…?あなたみたいな人と会ったことあるなら、忘れないと思うよ」
「ふふ、もしかしてナンパしてるの?私に? おかしい人ね」
誰かとお喋りなんて久々ですから、なんだか楽しくておかしくて、新鮮で。ついつい話し込んでしまいました。
勿論あとでちゃあんと死者だって言いましたけど。
「本当はね、死んでるんだよ私。所謂幽霊ってやつだね。…嘘だと思うなら証明しようか?ちょうどそこにお手軽の壁があるし」
「騙したわけじゃないよ?でもあなた、全然気付かないから、ちょっと面白かったな。鈍感な人ね」
「───トモダチ?幽霊と、おともだちになるの?」
「……ふふ。いいよ。一緒にご飯食べれないし、お茶も出来ないけど、話相手ぐらいにはなってあげる」
私が死者であることを話したら、離れて行くんだろうなと思っていたのに。まさか友達になろうなんて、想像さえしませんでした。
だって私達、今日初めて出会った死者と生者だから。気に留める理由があるわけないのにね。
「同じ高校だっけ?あなたみたいな目立つ後輩いたら覚えてるものだけどなぁ」
「ああ、こんにちは。今日は暑そうだからちゃんと水分補給してね。熱中症とか脱水症状になったら、ろくなことないから」
「昨日見かけた女性と今日見た女性、違う人だったけど乗り換えたの?…え、どっちとも付き合ってる?え、他にもいるの?…みんな、愛してるの?」
「別に不誠実とか最低とか、そうは思わないよ。ただ、 ───羨ましいなって。誰かに愛されて、愛することが出来るのって。……うん。それだけ」
あなたは私の、おともだち。
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ねえ、あなた。あなたとのお話はとても楽しいよ。
私を見かけたら、あなたは当たり前のように話しかけてくれる。それもとても嬉しいの。
ねえ、あなた。あなたは分からないでしょう。
成仏出来なくて、消えることが出来なくて、死んでも尚無視されて、誰にも気付いてもらえなくて、一人ぼっちだった私の4年間を。
きっと分からないでしょう。ええ、ええ、死者にしか、私にしか分からない孤独と空虚と寂しさです。
でも、あなたは私を見つけてくれた。
あなたが私に光をくれた。
それがどんなに救われたか、あなたは知らないでしょう。
ねえ、あなた。最近、あなたと会って、あなたとお話して、あなたが笑顔を向けてくれて、あなたが帰ってしまう度に、どろりとした、よく分からない感情が渦巻くの。
おともだちに向けるには、あまりにも重い感情よ。
それが一体何なのか、最初は分からなかった。
でもね、最近ようやく分かったの。
まだお母さんを愛していて、その死さえ認めないお父さんを久々に見たの。───それを見て、気付いたの。
どうして気付かなかったんだろうって不思議に思ったよ。
私はこの感情を、ずっとずっと近くで見続けてきたのにね。
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「あなたを娶りたいって言ったら、許してくれる?」
「…ああ、ごめんね。いきなりだった。えーと、冥婚って知ってる?そう、死者が生者を娶るあれ。あれをしたいの」
「うん、そう。あなたを連れて行きたいの、私。あなたと一緒にいたいの。それぐらいあなたのことが好きなの。駄目かな?」
「…そっか。あなたは冥婚に無関心なのかぁ。そっかー………じゃあ、口説き落とすしかないね?」
「ん?私一言も諦めたなんて言ってないよ。そんな聞き分けの良い子じゃないもの。あなたが嫌って言うなら、私があなたを絆せばいいだけの話だし」
「大丈夫だよ。無理やり連れて行くなんてことはしないから。……ふふ、何事も合意が大事なんだよ。合意があれば、何したっていいんだよ」
「今まで誰かを愛したことがないから陳腐な言葉しか言えないけど。それでも、私の思いは伝えても問題ないよね?」
「 ねえ、ロミオ。あなたのことが好きよ 」
「 生きているあなたに、私のために死んでほしいと願ってしまうほど 」
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「月なんて不実なものに誓ってあげない」
「私が誓うのはあなたよ、あなただけよ、あなた自身よ。知ってるでしょ?」
「分からないなら何度だって伝えるよ。嫌ってほど聞かせてあげる。別にそれが苦じゃないし、むしろ楽しいから、私はそれでも構わないけどね」
「でも、これだけは言っておこうか」
「あなたが私を望んだ時。あなたが私に願った時。あなたが私の手を取った時。───その時が来たら、私は喜んで、 」
「 あなたを殺して、彼岸へ連れて行くよ 」
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キャプション随時編集中。
2020-06-03 13:38:37 +0000