トヨタ1600GTはその成り立ちや見た目こそ三代目コロナのハードトップ後期型と大差がないが故に「コロナGT」と呼ばれていますが、全く別物と言って良い車に仕上がっている。
トヨタ2000GTの弟分、そして普及版である1600GTは2000GT発売から遅れること三か月後の1967年8月に販売開始。
ベースは先述の通り三代目コロナのハードトップで、ボディもフェンダーアーチが大きくなったことやフロントフェンダーに放熱用エアアウトレットや専用の三角型七宝焼のバッジが付いた以外は外観に大きな差異はないものの、エンジンその周辺のメカニックに足回りは大幅に変更されている。
エンジンはコロナハードトップが積んでいるOHV型四気筒エンジンの4R型のシリンダーブロックに、ヤマハ製のアルミニウム合金ヘッド、ソレックス製ツインチョークキャブレターを2連装に換装させてDOHCエンジンにした9R型(最高出力110馬力、最大トルク14kgm)を搭載。これに組み合わせる変速機は4速MT(GT4)と5速MT(GT5)で、特に五速MTは2000GTと同じものを使用していました。これにより五速MTモデルでは最高時速が175キロとベースとなったコロナハードトップよりも30キロ以上最高速度が出せた。尚、ゼロヨンは17.3秒をマークしている
サスペンションは前輪がダブルウィッシュボーン式の独立懸架、後輪がアンチロールバー付き半楕円リーフリジット。ブレーキは前輪がブースター付きのディスク式、後輪は圧力コントロールバルブ付きドラム式。
これ以外にもアルミ製冷却オイルパン、大容量オイルポンプ、電磁式燃料ポンプ、オプションで制限装置付き差動装置(所謂LSD)を搭載した。
内装も2000GTと同じデザインのハンドルを持っているものの2000GTが木製に対して1600GTは全てプラスチックで出来ている他、リクライニング付きビニールレザー張りのバケットシートにフルスケールの大径メーターなどの計器盤、コンソールボックスなどが2000GTと同一デザイン、または彷彿とさせるものだった。
価格は2000GTが238万円に対し、GT4で96万円、GT5で100万円と普及版らしく圧倒的なお手頃モデルだった。
トヨタ1600GTにはプロトタイプが存在し、こちらは前期型ハードトップをベースに作られた『トヨタRT-X』と呼ばれるモデルである。RT-Xは国内レースでは富士スピードウェイ完成記念レースに初参戦してそのまま初勝利を飾っている。これを皮切りに1600GTになってからも同じクラスのベレットGTやブルーバードSSSのみならず、フェアレディ2000など大排気量車にも勝利を重ねることも多く、1968年の日本グランプリでは当時の王者であったスカイライン2000GT-Bを打ち破るなどし、約三年間ツーリングカーレースを席捲した。特に1969年のJAFグランプリは鳴り物入りでデビューしたハコスカことスカイライン2000GT-Rを接戦の末に抑えきって先にゴールしたものの日産ワークス側からの物言いで走路妨害のペナルティーを取られ二位となったが為に非常に後味の悪いレースであった。この経緯はこの車の未来を暗示しているものだったと後年言われるようになる。
そもそも販売期間は1年と2か月と非常に短く、生産台数はたった2,222台と少ないことに加えて、トヨタ2000GTと同じパーツを使用した為に部品取りにされたこともあり現存台数が非常に少ない。
故にトヨタ1600GTはまさに悲劇の名車という扱いを受ける所以である。
「※2020.6/2追記」
この車の開発に専門学生時代のデッサンの先生がかかわっており、フェンダーミラーの設計とデザインで特許をもっている。先生曰く、ある速度(時速80だったか100キロだったか……)に到達すると自動で風切り音が出るように設計されているという。
2020-06-01 14:53:34 +0000