【恋異世】ターク【2期】

mojiro
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■企画:恋をするなら異世界で!【illust/78513489】 2期もよろしくお願いいたします

■ターク・ファルター 17歳/男性/172cm/
 鮫系魚人『クガザメ』の母と幽霊の父との混血/カデットブルーラグーン所属
 一人称:おれ 二人称:おまえ、呼び捨て 特技:水泳、形態変化、浮遊

□性格 仏頂面な強がり繊細感激家

▽▼家族▼▽
父:ナハト・ファルターさん【illust/80152329(とーちゃん)
「や、いくら驚かしてもさすがにもう泣かねえよ……おれが何歳だと思ってんだよ」

母:ニッテ【illust/80230383(かーちゃん)
「おれのことはもうほっといてくれよ! 会いに来なくていいっつーか来んな!」

兄:オナガ・ファルターさん【illust/81336370(にーちゃん/おっさん)
「おれ忙しいんだけど。泳ぐからおっさんはついてけないだろ。そんなになんか構いたいんなら蝶でも飼えば? どっかの幽霊なんかほっときゃいいんだよほらもうあっち行って……おれの隣に来るのやめろ! 並ぶな!! このメガロドン!!!」

▽▼素敵なご縁を頂きました▼▽
ホワイトタウンのエメル=レプスさん【illust/81535588


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▽涙

――やっちまった。見られた。間に合わなかった。今すぐ海に飛び込みたい。

今、おれがいるのは写本屋『サブリエール』で 、周りは本の海とも言える。
何ならその本の中にだって海はある。
試しにそこの青い本を手に取り表紙を開いてページを捲れば瞬時に飛び込めるだろう。
本の世界に潜るのはいつだって新鮮だ。
おれの中にないたくさんのものを見せてくれた。
自分にはできない様々な体験をさせてくれた。
(でも、今はそれじゃ駄目なんだよ)

本に惹き込まれて夢中になっていたのは確かだ。
……だけど、それだけではない。
自分で本を選ぶようになってから、『サブリエール』にいる時間も少しずつ長くなった。
読書に興味がなかった頃や、ただ薦められた本を読んでいただけの時期から考えたら信じられないくらい、長い。もう居座ってる。あの客いっつもいるよなって噂になってねえかな……。
冒頭を確認するだけのつもりが、つい時間を忘れて読み耽っちまうんだなこれが……写さずに全部読み終えちまうの、まあ、ちょっとは悪いと思ってるけどよ……つーかおまえだってそういうことあるだろ?

おまえ――店主のエメルがあれこれと作業(何やってんのかよくわかんねえんだよな)をする音や、来店客に応対する声なんかを耳にしながら『サブリエール』の蔵書を読んで過ごすことに、いつしか居心地の良さを感じるようになっていて。
……だからつまり、油断していた。

「誰かが、何かが、死ぬ話……最近写したの、そういう本が多かったろ? 今日のこれもそう」
「この前、おれがものす……っげえ顔しながら来たの覚えてる? おれが感想拒否った時の。あん時読んだやつ、やばかったな。本の中の死ですらあんなに引きずる始末だ」
「何度も本を通して死に触れた。いくつも見てきたけれど全然慣れない。お話の中の作られたやつらが乗り越えてるのに、現実に生きてるおれが追い付けない」
「おれの父親、幽霊なんだ。知ってるか? あいつら年とらねえし、死ぬこともない。もう死んでるから。……だからおれさ、いつ死ぬかわからないんだ。おれには年の離れたにーちゃんがいるんだけど、にーちゃんより早いかもしれない」

「死ぬのが怖いんじゃない。残されることよりも、大事な人を独り残して逝くことの方が――――おれはつらい」

家族にも言えなかったことをエメルに話している内にいつの間にかおれは落ち着いていた。
涙を見られついでに半ば自棄になって吐き出していたようなもので、本の話から外れて個人的な話になっていたのに止まらなかった。まあ、涙は止まったからいいか、もう。
たくさん本を読めば死に対しても強くなれるかと思っていたけれど、自分の弱いところを見る羽目にもなるんだな、つーか見られたんだよちくしょう!!!!!
ああほら! また恥ずかしさがぶり返して来た!!
……おい、泣いてたの、誰にも言うなよ。

一番涙を見られたくない相手がエメルだった。
一つ上で(一歳差とか誤差だろ、誤差)、おれより多くものを知っていて、やりたい事、やるべき事にやりがいを持って取り組んでいて――おれもその場所に近付きたかったから。
……まあ、あと、女子だし。一応。
おれの家族のこととか別にあいつには関係ないのにな。
でも、話した相手がエメルでよかった気がする。なんでだろうな。エメルと同じくらい本を読んだらわかるのかな。
――あ、今日の本、写してもらうの忘れちまったわ。

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▽自然

あいつが何かすげえこと言ってくるからまた写してもらうの忘れて帰ってきちまった。
(最近こんなんばっかだ)
以前よりうまく話せなくなった。名前も呼べない。目を合わせるのも避けている。かろうじて本の感想が言えるくらい。
それなのに『サブリエール』通いは続けている。
どうしてこんなことになっているのか、なんてとっくにわかってる。
感想を語り合う内に自分の気持ちを見つめることに慣れ過ぎたせいだ。ごまかす余地もない。
――あいつと一緒にいることが何よりも自然になっていた。
……というのに今のおれときたらまったく、不自然だ。
(あー……一つも打ち返せないとかダサ過ぎ……かっこわりい……)
その日読んだ本について考えるのが寝る前の習慣だったのに、気が付けばすっかりあいつに頭を侵食されている。
眠れない。
今日は特にひどい。
うーん……ひと泳ぎするか……?

***

翌日寝坊した。
慌てて魚も獲らずに真っ直ぐ白の町へ向かう。
水路を泳ぐ。
やけにすっきりしたおれの頭が言う。
「別に会う約束してるわけじゃないだろ」
うるせえよ!!!

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2020-05-03 04:57:31 +0000