茶色の縦縞の胸当て、生成りのレースに、紺のリボン。光を受けてところどころ金色に輝く、綾織のスカート。
それは、あの絵の衣裳を模したものだ。
マリ・マンシーニの肖像画の。
但し、そこには17世紀にはなかった “ジッパー” がついている。
そのジッパーが開いたまま……襟は大きく開き、彼女の肩からずり落ちそうになり、白いブラウスがのぞいている。
右手には大きなつば広帽子。風に煽られて揺れる髪は、短い。
まるで男の子みたいだ。
< 中 略 >
彼女は、感じた。
両頬に、サングラスのつるが触れるのを。
サングラスのつるから頬へ、そして頬から目もとへ、指がなぞってゆく。
大きくて、長い指。
その指が、拭ってゆく。
涙の痕を。
「僕が描きたいのは……白いシャツの、きみなんだよ」
2020-04-26 08:08:39 +0000