「僕が伯爵と呼ばれる7日の間に」 第7の鍵 ―風の慟哭②―

五十五 望 いそい ぼう

茶色の縦縞の胸当て、生成りのレースに、紺のリボン。光を受けてところどころ金色に輝く、綾織のスカート。

それは、あの絵の衣裳を模したものだ。
マリ・マンシーニの肖像画の。

但し、そこには17世紀にはなかった “ジッパー” がついている。

そのジッパーが開いたまま……襟は大きく開き、彼女の肩からずり落ちそうになり、白いブラウスがのぞいている。
右手には大きなつば広帽子。風に煽られて揺れる髪は、短い。
まるで男の子みたいだ。

< 中 略 >

彼女は、感じた。
両頬に、サングラスのつるが触れるのを。

サングラスのつるから頬へ、そして頬から目もとへ、指がなぞってゆく。

大きくて、長い指。
その指が、拭ってゆく。
涙の痕を。

「僕が描きたいのは……白いシャツの、きみなんだよ」

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2020-04-26 08:08:39 +0000