別れ際に鈴子を抱きしめる金田一耕助~ドラマ本陣殺人事件より

けろっぐ博士

横溝正史ドラマシリーズ中で最も好きなシーンです。
凄惨な事件が集結し、別れ際に、一人ぼっちになった鈴子は金田一耕助に言います。
「また来てね・・・。」
それを聞いて金田一耕助はたまらなく鈴子のその細い体を抱きしめます。
鈴子の目から涙が滴り落ちます。

なぜ本陣殺人事件は本陣殺人事件ってタイトルなんだろう・・。
横溝正史の作品って、多かれ少なかれどこかの旧家、
いわゆる本陣みたいな所が舞台になりますから
わざわざ「本陣殺人事件」っていう必要もないのになぁ・・・なんて
思ったものでした。
考えると本陣殺人事件は金田一シリーズ第一弾なんですよね。
旧家で、怪しげなキャラや美少女が登場する‥なんて言う
金田一耕助シリーズの設定が、この時点ではまだ
デフォルトではなかったのかもしれない。

しかし「鈴子」は大好きですね。
たとえどんなに残酷で凄惨でも、読者は世知がない社会から一瞬でも
エスケープできる浮世離れしたファンタジーを夢見るものです。
まず今時あり得ないような旧家。
現実ではあり得ないような殺人事件。
どうやって食べているのかよくわからない金田一耕助の自由さ。
さらに本陣殺人事件の鈴子の場合は、獄門島の三姉妹と違って
この事件そのものからもエスケイプしている。
そしてやがて人生からもエスケイプしようとしている。
世知がない現実の中で、私はそんな「鈴子」の浮世離れした
存在感に憧れるんです。

#牛原千恵#横溝正史#本陣殺人事件#金田一耕助

2020-04-05 03:40:26 +0000