―――――――――――――――――――――――
『…覚悟しておるな。ふむ。良いじゃろう。誰でも無く、トワイ、お主が楽にさせよ』
……今なんて言ったの。”アクロを殺す”ということ……?
「どうしてなのですか!!まだアクロは生きています!!!まだ、まだ、オーラを貰った今だったら、私たちにだってできることが」
「お主は『アレ』をみて、まだアクロに生きろと申すのか?」
アクロの方を見る
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
苦しそうに、そして決して私たちを傷つけないために視界に写そうとしないアクロは、誰かがそっと指を触れるだけで怖そうなその様は、誰が見ていても辛いのは一目瞭然だった。
でも――――でも―――――
私はあの子だけじゃなくて、アクロまでも失わないといけないと言うの―――?
前の世界で私をいつも困らせていたあの子。アクロとそっくりなあの子。
毎日のように困らせてくるかと思えば、にっこりと手作りの花冠をくれる、悪戯好きで優しいあの子。
思考回路がまとまらなくなる
あぁ、神様、何故なのですか――――
私はただ、一人の神官としてあの子たちを看てきただけなのに
私はただ、一人の女性としてあの子たちを見守っていただけなのに
――――どうして、どうしてどうしてどうしてどうして!!!!
あの子たち以外何もない私から、神はそれすら奪っていくというの――?
「…やるぞ。」
トワイは涙を流しながら、右腕をアクロに向ける
そして、ゴオという大きな音と共にトワイの右腕は射出され―――
アクロを貫いた
私は言葉すら上手く出せず、膝から崩れ落ちた
「泣いておる暇はないぞ、ソプラノ。まだ、戦いは終わっていないぞ」
そうアリスは言い、私に手を差し伸べる
しかし、私はそれを振り払う
「『殺すこと』が救いなんですか?!!『失うこと』が救いなんですか!!!『奪われること』が救いなんですか!!?」
何度も地面に拳を叩きつける
そして最後に大きく振りかぶって――――
「それが『救い』だと言うのなら、こんな世界、、こんな世界―――――――!!!!!」
突然、アリスは見下したような視線で私の顔を蹴りつける
受身すら取れず、私は大きく三回、四回と転がり続けた
「『こんな世界』が、何だ?その先を言ったら、ソプラノ、お主も殺すぞ」
私の胸倉を掴み、更に顔面を殴りつける
「お主に何があったかなど、妾の知ることではない。だがな、その言葉の先を言えば、お前はアクロを、何もかも、『全てを否定する』ことになるのだぞ!!!お主はそれで良いのか!!!!!!」
「――――ッ!!」
「お主が今此処で生きているのは何のためだ?アクロが死んだ後、後を追って死ぬためなのか?!それとも悲劇のヒロインを演じるために生きておるのか?!」
アリスはまだ言葉を続ける
「妾は言うぞ、嘆く暇があるなら”足掻け”と。諦める暇があるなら”足掻け”!!絶望する暇があるなら”足掻け”!!そこまで心がへし折れていたお主がまだ”生きている”ということは、”足掻き続けろ”ってことじゃろ!!!」
心臓を撃たれたように、私はハッとする
何故、諦めてしまっていたのだろう。いつから諦めてしまっていたのだろう。
きっと、邪神に故郷を壊された時からずっとだったのかもしれない
このままアクロが死んだ後で、全てが終わった後で私が生きているのであれば、まだ足掻く方法があるのかもしれない。
足掻くことを決心し、立ち上がると空から青白い光が私たちに目掛けて差してくる
これは――――クライとリオンの光。涙石の光。
そう、クライ、リオン。貴方達も最後まで足掻くつもりなのね。
どこからともなく、ギムレの分身の一体が現れ、それはトワイに向かって襲い掛かる
私は首の十字架を引きちぎり、それを掲げ、トワイとギムレの間に入る
「ソプラノ、お前何をっ――――」
何でこうしたのかは私自身、よく分からない
だけど、不思議と死ぬ気は無かった。いや、死んでたまるものですか。
「私は、もう神になんか惑わされたりしない、運命にも惑わされない」
私を中心に結界の様なものが展開され、ギムレの攻撃はそれに吸収された。
ギムレの分身は即座に距離を取り、今度はレーザー攻撃を試みるがそれも空しく、全て結界に吸収された。
結界を解き、私は全身に力を込める。星光石を使った時、いや、それよりも強い力が全身に宿る。これが私の石の力……?
「全部、私のこの手で全部!!立ちはだかる壁は全部打ち壊して、その先にある物全部掴みとってみせます!!誰にも邪魔はさせません!!」
そう言う私の身体には、黄色いオーラが宿っていた
私は分身の方を向き、地面を蹴る
そして、分身に全身全霊の殴りを喰らわせる―――――――
それは今まで受けた攻撃を倍にしたような攻撃力で、分身は私と同じように結界を張って防御姿勢を取るも、結界は容易く破れ、まともに攻撃を喰らった分身は遠くへと吹き飛ばされた――――――
「少しはまともになったようじゃな、ソプラノ」
アリスはやれやれといった表情で、私の頭を優しく撫でた。
―――――――――――――――――――――――
【novel/12612128】←前 / 次(ラスト)→【novel/12641251】
最初から【novel/12293288】
時系列は【その手で背負った罪は:illust/80406670】と【希望へ至る厄災:illust/80421151】の丁度間ぐらいです
最終章のソプラノたちの行動はここで終わりです
エンディングは、ギルド公式の方で色々物語が展開し終えたあたりで出します
【ソプラノの二つ名石による、新能力:全てを帰す反撃の聖壁(リベンジ・セイクリッドウォール)】
スノココちゃんオーラ+ソプラノの二つ名石の力により発動した新能力
ソプラノの十字架を中心に結界を張り、その結界に与えられたあらゆる攻撃を吸収する。使用した際、次のソプラノの攻撃が『結界が受けた総ダメージ』を『1.5倍にした威力』になる。
◆お借りしました!
トワイくん【illust/78957398】
アリスさん【illust/80101270】
アクロちゃん【illust/78994200】
2020-03-29 10:38:56 +0000