私のお話を、聞いていただけますか?
私がどうして弓使いにならなかったか。
我が家は代々優れた弓騎士を輩出する家系であることはご存知ですね。今では父や兄、弟の足元にも及びませんが、これでも昔は私も弓矢の扱いについては期待されていたのですよ。…ふふ、意外ですか?
狙った場所に矢を射ることに不安はありませんでした。けれど、わたしには「傷つける矢」は上手に射ることができても「守る矢」は放てませんでした。
私は騎士であり、狩人ではありません。
だから、治癒魔法を学びました。
遠くから獲物を射る目は、どんな怪我も見逃さずに癒せる目に、相手の動きを読む力は適切な援護魔法をかける判断力に変わりました。
父と同じ、兄と同じ道を辿る必要はないと私は思うのです。目指す地に辿り着く道程は、星の数ほどあります。自分にできる方法で、辿り着けば良いのです。
私は今でも、弓を扱うように魔法を扱います。攻撃魔法を使えばまるきり弓矢と同じように戦えます。本物の弓矢も、使えなくなったわけではありません。
ちゃんと、弓騎士でしょう?
……私のお話はこれで終わりです。ランスリンド様、お付き合い頂きありがとうございました。
強くなるには、休むべき時には休むことが必須ですよ。これは武術も魔術も変わらないことです。そして、支えようとしている仲間にとっても、支えさせてくれることこそ万全の態勢でことに当たる要になります。……ね、安心して、ここはお任せください。
お借りしました
ランスリンド様【illust/79183549】
2020-03-21 18:04:57 +0000