四方を壁で囲い、その中に作り上げられた庭園、パイリダエーザ。
天上の楽園に名を由来するそれは王族や貴族、宗教指導者や豪商など
力あるヒトがその力を示すために古来より生み出されてきた。
探索中に見つけたこの庭園もそうして作られたものであろうと推測したが──
そこにいた管理者は予想外の存在だった。
「ようこそ、小さきものよ。
この地に至りし其方への褒美に、我が庭より花を一輪摘むことを許そう。
希なるものでも構いはせぬ。ただ一輪のみ選ぶが良い」
白鱗の竜はこちらを一瞥し、撞鐘のような声でそう告げる。
しかし、その身体は僅かながらではあるが解けつつあるのが見えた。
「小さき魔の娘、其方には視えているであろう。
星の光は失われ、この現し身も近くに解け空に消ゆる。
其方であれば花の一輪といわず、この庭ごと奪い獲れるやもしれぬぞ?」
「……竜よ。俺様の話を少しばかり聞いてくれないか。
俺様はここより遥か西の地、インティニアで錬金術を究めんとするものだ。
そう、創り手だ。
そして千載をも超す御身に比すれば拙き身なれど俺様にも誇りというものがある。
我が血と角と名のすべてにかけても守り抜くべき誇りだ。
俺様は創り手。決して簒奪者にはならぬ」
***
パイリダエーザと守護の竜:
かつてこの地に生きていたとある貴族の男が亡き妻を偲んで建てた庭園。
設備の維持と管理者たる竜の召喚のため星光石が使われている。
実際のところ、既に星光石の力は100年以上前に失われてしまっている。
庭園が未だその姿を保っていられるのは
友とその妻の墓所でもあるこの場所を守らんとする竜の心によるものである。
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総ての創り手には敬意と賞賛を【illust/79428063】
企画元:pixivファンタジア Age of Starlight【illust/78509907】
2020-03-21 17:59:55 +0000