ドゥンもどき
――――――
その獣は朝と夜の狭間に生まれる
人の溢れた心が固まって 人ではない純粋な獣に
朝焼けに生まれた獣は 白い獣に
夕焼けに生まれた獣は 黒い獣に
白い獣は 正しき心を
黒い獣は 悪しき心を
溢れたそれを食らって 空を巡る
白い獣は 朝に消えゆき
黒い獣は 夜に溶けゆく
溢れた心は 獣の中で 固まり
小さな見えぬものになって 人の願いを叶える
食らえば食らうほど 大きな願いを
獣には三つの禁忌がある
一つ、己と逆の色の心を食らう事なかれ
一つ、己の為だけに願いを叶えるなかれ
一つ、己以外の命を奪う事なかれ
古い獣たちは禁忌を禁忌のままとした
それなのに 戦の火は 獣をモノとした
獣は死んだ 獣は怯えた 獣は逃げた
獣は 朝と夜に還ってしまった
獣は 生まれなくなってしまった
たった二匹を残して
生まれたばかりの白い猫と
それでも人を愛した黒い烏を残して
――――――
最後の獣たち(illust/79455410)(illust/79041987)
2020-03-15 14:12:32 +0000