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彼女が雨の日に調子が悪くなることも、それが精神面から来ることもこの10年で知り得たが痣については初耳だ。
「…痣ですか?…もし聞けそうなら彼女に確認してみましょう。貴方が聞いても恐らく心配かけさせまいと答えてくれないような気がしますし…ね?」
少し困ったように笑いかければ彼も同じように笑い返すが、少し無理して笑っているように見えなくもない。
普段心配してくれている大人がまるで別人のように感じられる瞬間を見てしまっては無理もない。
そんな彼の頭を軽くなでることしか今の私には出来ないのがとても歯痒い。
しかし…痣のようなもの、ですか。
先日の襲撃で相手から危害を加えられた?それとも今まで潜伏あるいは隠していたのが限界に達して表に出てきた?これに関しては私も知りたいところです。
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「貴方に出来ること、ですか?」
そう零してストローで茶を一吸いしては、木陰の隙間からこぼれ落ちた陽光を見つめるを繰り返す。
「極論を出すなら“普段通り良い子でいること”でしょうか」
「え?」
再び串焼きに口をつけようとした手は止まり、本人は目を点にした。解ってはいたが当然の反応でしょう。
「1番は彼女の手を煩わせない、心配させない事だと思うのです。」
「…心配させたら…エルズリーさんは俺たちの世話をしようと無理しちゃう?」
「それが1番有り得うるかと。不安がらせないように、癒すように、自分が何とかしなくては…彼女の場合そうやって何かしら頑張ろうとしてしまう。
ですから私は普段からわざわざ彼女が手を出さなくて済む仕事を勝手に回収して処理する訳ですが…」
おっと、私の話はここでは不要ですね、と苦笑しては茶を飲み間を置いた。
彼が求めているのはこんな“やってて当然”な事ではない、もっと“自分だから出来る”や“少し難しいかもしれないが頑張れそう”な事、そして“彼女のため”にできる事の提示。実に難しい。
私は彼ではない、逆も然り。彼が出来そうなレベルを見極めるのがとても難しい。いや、彼に限らず誰にでも当てはまる話なのですが。
「…彼女の傍に居てあげること、が良いのではないでしょうか」
やはりこれしか今の所思いつかない。子供だから踏み込める範囲、大人の私では流石に踏み込めない範囲。
この程度の案しか出せないのが情けないものです。
「特別気を遣った言葉をかけなくて良いのです。ただ彼女の心の支えになればいいのです。手を触れ合うだけでも不安が和らぐ人も多いと聞きますし…如何でしょう?」
もしそれをするにもきっかけが欲しいのなら更に考えましょう。
それ以外でもお茶汲み等、私が彼女相手に普段やっている事でやってみたいものがあるのなら一から教えましょう。
私が居なくなっても大丈夫なように
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こちら【illust/80004411】のお返事になります。
お借りしましたリュビくん【illust/79062147】
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以下の実績を解除しました。
【紅影の助言者】
☑︎想い人を想う人に助言をしている
☑︎想い人と結ばれていない
「私では掴めないものですが、きっと貴方なら掴めることでしょう」
2020-03-13 12:12:51 +0000