島の東の入江、島一番の長さを誇る「母なる河」の河口の肥沃な土地には、植物が密集した不気味な森がある。ここは「毒の魔鳥の巣」と呼ばれ、危険な「魔鳥」が島で唯一生息する場所なのである。
島を山脈に囲まれる恐竜島に上陸するには必然的に東の大入江から行く必要があるが、その東海岸の中でもっとも上陸がしやすいのが、奇妙なことにもっとも危険なこの森なのである。恐竜島に上陸するものの最初の関門である。
森の密度はすさまじいもので、明るい島の陽光さえ一切通さず、森の中は常に夜のごとく真っ暗である。発光する植物や動物がたくさんおり、ぼんやりとした光で木々を不気味に照らす。島に広く生息する大蜥蜴も、この森では見られない。独特な生態系が築かれているのである。
森の頂点捕食者は「魔鳥」である。鳥のようだが鋭い牙と尾、物を掴みやすい手の指を持ち、れっきとした恐竜の一種であることが伺える。この恐竜は森の中に広く生息する「大眠花」という植物と共生している。(魔鳥はこの植物の受粉を手伝う。大眠花は魔鳥に甘い蜜を提供するほか、後述する方法で魔鳥の狩りを手伝う。これでは魔鳥に利益が大きすぎる気がするが、生存競争の苛烈な密度の高い森林において、確実に受粉が出来ることのメリットは非常に大きい。)「大眠花」はその名の通り、眠りを催させる物質(毒素とも、特殊なフェロモンだともいわれる。)を森の中にばらまく。(森の中に動物が侵入するなどすると、自己防衛のために物質を撒く。)森の中に生息する動物はこの物質に耐性がある上、特に魔鳥はこの物質を頼りに獲物の位置を察知することが出来る。森に侵入してしまった哀れな犠牲者は、この物質のせいで凄まじい眠気に襲われ、最終的には眠ってしまう。
魔鳥は獲物が眠るのを木の上から待つ。森は非常に広いうえ、何代も森の中に暮らす魔鳥たちは森を知り尽くしているから、じっくりと待つ・・・。獲物が弱って来ると木から少しずつ、少しずつ降りてきて、獲物が眠気に倒れた瞬間、集団は一匹ずつ獲物に噛みつく。魔鳥の牙には神経毒があり、哀れな獲物は二度と目覚めることのない眠りに墜ちてしまう。半ば一方的な勝負に勝った魔鳥たちは、獲物を少しずつ分配して食べる。
一匹ずつ獲物に襲い掛かることで被害を最小のものにする(ひと噛み目で獲物が起きると一斉に樹上に退散する。)、食べ物の分配をするといった点から、魔鳥は高い知能と社会性を持った恐竜だと分かる。
森の外に出ると驚くほど臆病で慎重になり、ネズミにすら手を出さない。(森の中のネズミや虫は好んで食べる。)暗い森に生きるが案外日光浴好きで、腹が膨れると日の当たる高い木に登って日向ぼっこをするところを見ることもできる。(この恐竜は不味いのか、この森の上空を通る翼竜も殆ど手を出さない。)
この森に入ってしまったジェイディとパース。ジェイディが眠気に倒れかけ、危機に陥ったが、パースが機転を利かせて通る所にあった大眠花を潰しまくることで、なんとか森を脱出することができた。
(魔鳥のモデルはシノルニトサウルスです。とはいえオリジナル恐竜なので色をネオンカラーに、そして発光器官もつけた上に身体もかなり大きくしました。実際のシノルニトサウルスはこんな感じではないはずです。)
(今度、牙を剥いてるバージョンの魔鳥も描いてみようと思います。お楽しみに。)
2020-03-10 12:27:46 +0000