【フェシーナ】幽霊船メリーメロウ【第四期】

アヤカワ
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企画フェシーナの花々に引き続き参加させていただきます。

 [前期]幽霊船メリーメロウ / 船長代理 トーヴ illust/78711538(30pt)
 [前期開花相手]飛空楽団ドゥディッヒカペレ / リュンさん illust/79219130
 [前期開花相手当代]飛空楽団ドゥディッヒカペレ / モモ・フィリーネさん illust/80012714
      
  きれいなオルゴールだろう
  曲名は知らないけれど
  きっと、楽しかった気持ちを
  友だちに届けたいと思った人が奏でた曲だ
  だってこんなにもドキドキする!

  
◇幽霊船メリーメロウ
 "バター薫る空飛ぶ幽霊船"
 ――その幽霊船に囚われた者はやがて変わり果てた姿で発見されるという
 
 志半ばで失くなったパティシエ見習い、非業の死を遂げた菓子職人……
 この世に何か未練を残し、死してなおお菓子作りを
 諦めきれない魂が集う、集っていた、幽霊船。
 
 ただいまの乗組員は……船長ただ一人。
 歴代の船長が遺した航海日誌をめくり
 誰の口に入るでもないお菓子を作り続ける毎日。

◇船長 カシュカシュ
 その少女は
 弱冠11歳にして数多の製菓コンクールで優勝し
 国内のみならず近隣の国にもその名を知られる程の
 実力の持ち主だった。
 
 国内最大のコンクールのファイナリストになった矢先
 嫉妬に狂ったライバルに殺されてしまい
 気がついたら幽霊船の上に。
 
 はじめて目覚めた日に見つけた
 美しい細工のオルゴールが大のお気に入り。
 一日の終わりに必ずその音に耳を傾けては
 目にしたこともない
 在りし日の面影を偲んでいる。

◆開花  …3/29 素敵なご縁をいただきました

逓送ポスティノ / スフィア・ブルーメ さん illust/80119909
人探しと届け物の依頼を。はじめて友だちになってくれた人。

 
少しの、好奇心だったのだ――。

ゆけどもゆけども青い空。
お菓子作りは大好きだけれど、独りはやっぱり手持ち無沙汰。

船内を探検して見つけた航海日誌も、読むのはもう5周め。
(嘘。途中から数えるのをやめてしまった。)
にぎやかで楽しかった頃のページに、なぜ今は空っぽなのかと首を傾げる。
いや、“未練"が鍵だというなら、乗員が少ない今の状況のほうが、いいってことかもしれない。
(どのみち、友達なんていた試しがないのだから、今さらだ。)

バターの香りは狼煙の代わり。
白馬の王子様とは言わない、せめて誰か話し相手になってくれる人が空から降ってきてくれたら。
――という呟きがついに聞き遂げられた。

「犯人探し……?」

空から降ってきたのは黒衣の少年。
聞けばさる組織で配達員をしているそうだが、仕事内容が幅広くて面白い。
ならば、と口に出してみたら、思いのほか物騒な響きになってしまった。
(犯人、なんて探すまでもない。でも、こうして留まっているんだ。知りたがったっていいだろう。)

🍪☕

「ごm…いや、すまない
 つい見惚れてしまった、こんなに美しい青があるんだな」

自分の手には余るからと、少年が紹介してくれた男(※)はとても美しい色をしていた。
美しく、前向きで明晰、とても居心地がよく……きっと頭のおかしな依頼でも、
よく取り計らってくれるだろう。

「依頼内容は『私』を殺した犯人探し。
 といっても、危害を加えるつもりなんてない。方法も分からないしな。
 ただ、『彼』なり『彼女』なりが、『私』を殺すことでちゃんと何かを得られたのか知りたいんだ。
 ちゃんと笑っていてくれないと、死んだ甲斐がなかったことになるからな!」

🍪☕

依頼をしたからといって、たちどころに願いが叶うわけもなく
(記憶が曖昧な上、いつ死んだのかすら分からないのだから当然だ)、
何日かに一度、情報共有を兼ねてのお茶会の回数だけが増えていく。

「細かいところを気にせず前向きなのは美徳だが
 菓子作りにおいては…うーむ……
 ははっ、でも、だからこそ、君のために私ができることがあるのだと思ったら
 それは私にとっては都合のいいことだな!」

「そう、だな。
 もし少しでも悔いているなら。
 うん、一口食べただけで思わず笑顔になるような、とっておきの菓子を作ろう。
 君なら届けてくれるだろう?」

「……本当は同じものが好きな者同士、友だちになろうって言うつもりだったんだ
 なんでもない、忘れてくれ。君は聞き上手で困るな」

「両親…そうだな。母様が……
 いや、よく覚えていない…が、小さい頃は、なにかする度に、褒めて、くれていたように思う」

「私の話ばかりだな!ずるいぞ!!
 そうだ、音楽の話なんてどうだ? 私の大好きな曲は、このオルゴールだ。
 君の好きな曲の話が聞きたい。ぜひ聞かせてくれ」

🍪☕

何度目かのお茶会。
彼に似つかわしくない表情に、すべてを理解してしまった。

「いいんだ。分かっていた」
(私がトモダチになりたいと思ったほどの相手だ。
 弾みでやったこととはいえ、後悔しないはずがなかっただろう。)
 
「さぁ、そうとくれば復讐の準備だ!
 人を殺しておいて、いつまでも不幸面してるんじゃない!!
 ぜーーーーったいに笑顔になるような美味しいお菓子を食べさせてやる!
 手伝ってくれるね、ブルーメ?」
(ねぇ、君なら偽善者面してと笑ったりなどしないだろう)
 
「復習の相手が足りていないだろうって――?
 ああ、もう、君は、本当に
 なんだってお見通しなんだな」
 
🍪☕
 
「すまない、ブルーメ。
 せっかく力を尽くしてくれたのに、新しい“未練"ができてしまったみたいだ」

君はきっと笑うんだろう。

カミサマなんて信じていないけれど。
どうか。もう少しだけ、はじめてのトモダチと過ごす時間を。

「私の友達になってください」
 
 
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※注※ 実際の性別ではなく、カシュカシュが初対面時に受けた印象から「男」としています

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今期で一区切りということで、ここまでお付き合いいただきました、けえ様・豆あり様に改めて感謝を。素敵なご縁をありがとうございました。
また、あたたかく家系を見守ってくださった皆様、素敵な企画を立案・運営してくださった主催様にもお礼申し上げます。

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2020-03-03 12:52:18 +0000