「はぁー……近くで見るとホントでかい、遠近感狂うわぁ……」
半ば放心したように巨大な星光石を眺めながら、素魔法の画角に
うまく収まりきらないそれを何とか押し込めようと、矯めつ眇めつ画面とにらめっこをする。
「あれどういう原理で浮いてんの……てかいつからあんなのあったんだろ……」
「まぁこの遺跡自体、ぼくが生まれるより前からあるみたいだし」
「……君いくつって言ったっけ?」
「えっ、もう歳なんて数えてないよ~、五百は超えてると思うけど」
「それでまだ全然コドモ扱いの年齢なんでしょ……長寿の種族は羨ましいな」
「退屈なだけだよー」
撮っては眺めてまた撮ってを繰り返すルチアを、ついさっき遺跡の外で知り合った
しろがね人は不思議そうに眺めている。
「鏡に映すのにそんなに時間が要るのかい?」
「ただ映してるんじゃなくて……あーえっと、映した風景を
そのまま画像……えー…絵として取っておけんの、これ」
「絵なら見たままを描けば済むじゃん」
「『映え』ってのがあるのよ」
「バエ……」
馴染みのない概念に首を傾げるしろがね人をよそに、ルチアは自分の構図力の無さに辟易し、
言ったそばから『映え』を諦め記録写真に徹することにした。
パチリパチリと周辺の風景を記録しながら、不意に沸いた疑問が口をつく。
「それにしても、よくこんなところまで来る道知ってるね?」
「この辺ぼくらの遊び場だもん」
「えっ、そういう感じの場所なのここ」
「年食ったやつらはこんなところで遊ぶなっていうけど、まあ無理だよね~」
「ああー……まあ、それはわかる」
見た目の大きさにそぐわない子どもっぽさを会話の端々から感じながら、
一通り映し終えた素魔法をローブのポケットに突っ込む。
改めて肉眼で眺める星光石の巨岩は、朽ちた遺跡に似つかわしくないエネルギーを放ち続けていた。
「……こんなに巨大な星光石の近くに住んでるのに、君たちの種族は
結構……なんつか、素朴な暮らしをしてんのね」
「そう?」
「こんなでっかいエネルギー源がすぐそばにあるんだから、もっとこれを使った
高度な文明が発展しててもおかしくないけど、そういうのないの?」
「………うん、ないね」
一瞬の返事の遅延に、先ほどまでの子どもっぽさが消え失せた気がして、
ルチアはそれ以上の詮索をやめた。
彼らは守り人である。何から何を守っているのかは、彼らの口から語られることはない。
「ま、よその文化に口出しするのは野暮っつーモンだわな」
「んー……まあ、でも」
「?」
「ここよりもっと面白いことがあるんなら、ちょっと見てみたいなあ」
眼前に浮く巨大な力。何もなくても、もうすぐに大陸の勢力が及ぶだろう。
知ってか知らずか未知を求める彼に、先なる探索者はにやりと笑いかける。
「知らないことを知りたいなら、自分で動く。
待ってるだけじゃ『皆が知ってること』しか手に入らない」
「……」
「五百年経っても衰えない好奇心なら、きっとどこへでも行けるでしょ。
西の方に来るなら、赤の国をお勧めしとく」
「赤の国」
「赤き新星、アステラ帝国。求める力があれば誰も差別されない国。
……まあ、近くに寄ることがあったら、ついでにグランギベオンもよろしくね。
君が見たことないような商品も、沢山売ってる」
「……へえ、憶えとくよ」
気の無い素振りのしろがね人を横目で見やり、そして青く光る巨大な星光石を
今一度眺めながら、ルチアは腕組みをして息をひとつ吐いた。
「んー、流石にこれは持って帰れないからな!今回は写真だけで勘弁しといてあげよう」
「また来るの?」
「さぁね、気が向いたら」
「またおいでよ、今度はぼくが知らないナントカってとこの商品も持ってきてよ」
「グランベ……グランギベオンね。てか自分で動けって言ったばっか」
すっかり陽が落ちた青黒い空を背に、2つの影が遺跡の抜け道を戻っていった。
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ギリギリ1章間に合った~
時間がなかったのでキャプション小説 現地のしろがね人と交流シタヨ
pixivファンタジアAOS【illust/78509907】
ロゴお借りしました【illust/78962445】
色んなものが売ってるよ!星光商業組合グランギベオン【illust/78986120】
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知らないことを知りに行きたい ルチア【illust/79272774】
2020-02-16 14:43:24 +0000