何が起こっていたのかは分からない。
瞬きをしている間に団長は立ち消え、しばらく後に、異形達が一斉に消えた。
強い力で潰された翼は動かない。
そのまま私は落ちてゆく。水面に向かって落ちていく。
見えた。
マグナ団長は、疲弊しているようだったけれど無事のようだ。
見えたのは一瞬で、それくらいしか分からなかった。
どぷん
世界が水色に染まる。
程なくしてゆっくり浮き上がり、はっきりとトライデントパレスが見えた。
隣にはパレスの残骸とともに海魔が浮いている。力尽きて置いてかれたのだろうか?
翼だけではなく、体のあちこちが思っていたよりボロボロだ。
動けそうにないけれど、どうやって戻ろうか?
「だいひょうぶれふか?」
海魔だと思っていた者が話しかけてきた。
よく観察してみれば、食堂でご飯を作っているシェフだった。
「あなたこそ…舌が回ってないみたいだけれど…」
「これは、わかれは影響でふ。わたひはおひてしまっららけなのれへいきれふ。」
見た目はずっと前から不思議だと思ってたが、この状況でも落ち着いていられる強い子だと感じた。
「私は…ボロボロで…動けないわね。あなたを抱えて…戻りたいところなんだけれど…。」
「れは、わたひがろうにかしまひょうか?」
「どうにかする…どうやって?」
「あなたをてんいさせまふ。」
彼…?がグワンと大きく口を開くと、そこには宇宙が広がっていた。
そのまま捕食するかのように近づいてくる。
普通に怖い。
「ま、まって…ありがたいけれど…あなたは…どうやって戻るの?」
「わたひのころはごひんぱいらく。」
ご心配なく…本当に大丈夫だろうか?
彼が戻る手段はあるのだろうか?
私が転移してる間に、彼が海の生物に襲われる可能性は?
「もうちょっと…こうしていよう…一人じゃ危ないよ…。」
放ってはおけない。
その心がとっさに言葉を紡ぎ出していた。
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第一章ラスト投稿です!
時系列的には、こちらの展開【illust/79486885】の終盤あたりに起こっている出来事になります。
傷ついたマルテはしばらくの間、水面を漂っている状態となります。
この状態でも、液体金属を使用して自己防衛が可能、のウンさんを外敵から守ります。
何事もなければノウンさんの転移でトライデントパレスへ帰還する形になると思われます。
お借りしました
分裂したノウンさん【illust/79150480】
マルテ【illust/79114699】
2020-02-16 09:59:19 +0000