「君の中にあたしを加えてよ」
月にとける【illust/78186139】
◇伽藍 日宵(がらん かよい)
女/19歳/161cm/大学生(休学中)
一人称:カヨ、あたし 二人称:君
「あたしの目の色は地球の海の色なの」
「君の目の色が、青くなるんならよかったのに」
自我が薄く、周りに流されるまま生きてきた。
少しだけ気にしているが生きていけるし、特別不幸でもないし
このままでもいいかと思っていた。
健康診断の際に自分に抗体があると診断され、その足でドナー登録した。それは紛れもなく自分自身の意思。
何もない自分でも誰かの役に立つことができる。誰かを救うことができる。初めての感覚だったし、迷いはなかった。
移植の抵抗や恐怖はないが、そのあとにまた元の自分に戻ってしまうのでは?と不安を抱いており、レシピエントに交換条件を持ちだす。
自我が芽生えたというか芽生えすぎたというか、言い方が以前と比べ少々辛辣になった。
生活能力が恐ろしいほど低い上に不器用。
このままでは一人になったとき生きていけないと姉のそばのアパートで一人暮らしをしている。
「本物のウサギもいないし、海だってキレーに舗装されちゃって、つまんないね」
「だって今って、お月見できないんだよ。ねえどう思う?」
🌕姉🌑伽藍 朔日ちゃん【illust/79539858】
「帰る!だって本当に居座っちゃうもん…甘えるわけには…」「えっえっ、そんな顔しないでよぉ!」
「いっちゃん…じゃない!お姉ちゃん!カヨだって一人でも平気なんだからね!」
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「まだ見ぬ君へ。きっと君の役に立つから君もカヨのにものになってね」
2/24♥素敵なご縁を頂きました!
君の幸せを願う 神林 浩平さん【illust/79587510】
適合するレシピエントが見つかった!
年上の男の人だ。移植はいつするんだろう?終わったあとも連絡とってくれるかな?
どきどきしながら色々考えてたのに、その人は移植に難色を示した。どうして?
あたしなら涙を流して喜んでたかもしれないのに。
「わかった。おじさん!あたし諦めないよ!」えっ?おじさんじゃないって?じゃあ名前教えて!
…そういう意味じゃない?
だってこの人は自分の意思を何も言っていない。ドナーの心配をしている。自分が死ぬかもしれないのに?
それなら本音を引きずり出してやればいいのだ。
昔のあたしならここで諦めてたかもしれないけれど、今、目の間にいるのはレシピエントで
……カヨを助けてくれる人かもしれない。
「それってさあ、神林さんが旦那さんになれば問題ないってこと?」「…あ!そういう意味じゃないよ!」
幸い時間はあったので、何回でも通って、言って、移植を持ちかけた。
休学中で良かった、って言ったら怒られるかな?
もし通ったままでも、きっと何も手につかない。ずっと神林さんのことを考えていただろう。
迷惑そうな顔…、いや、困ってるのかな?
でも、それでも、このくらいはしなきゃ。ずけずけと土足で踏み込むような真似、こうでもしなきゃきっとこの人は会ってくれないし。
(勉強しとけって?君が移植にOK出したらね!)
それなのに何回でも断られる。説得される。
こんなに頼んでるのに(ドナーのあたしが!)、なんだか失恋しているみたいじゃない?
ムカついてきた。そっちがその気ならあたしだって何回でも言う!
「神林さんってカメラマンなの?どんなの撮ってるの?」「ふうーん。月の写真は撮らないの?」
ふと思いついた。人工物だらけの世界で本物を作れば、この人は生きたいって思ってくれるかもしれない。
「ならあたしが地球にあるような自然を育てるよ。時間かかるだろうから今死んじゃうの勿体無いよ!どう!?」
君の生きる意味を作らなきゃ。
「じゃ、あたしのこと撮って!地球生まれだから地球のものだよ。しかも瞳は海の色!…風景じゃないけどさ」
君が死んだらきっと泣いてしまう。
それはあたしの生きる意味がなくなってしまうから?それとも……。
神林さんが承諾しないまま時は過ぎる。焦りと悲しみとそして怒りが同時に押し寄せる。
どうして助けを求めてくれないのか。君の、ぶっきらぼうなのに優しいところが嫌いだ。大嫌い。
わからず屋!あたしが必死になるのはカヨの為じゃない。君のせいなのに!
「あたしが神林さんより年上なら良かった?男の人なら良かった?もうすぐ死んじゃう人なら?」
「……あたしのことはどうでもいいの!神林さんは!?なんで何も言ってくれないの!」
もう会ってくれなくていいよ。あたしのものじゃなくていい。移植して神林さんが生きてくれるなら。
君に生きててほしいの。
あたしの知らないところでも元気で幸せでいてくれるならそれでいい。
きっとそれが、それがあたしの生きる糧になるだろう。
(最後にいい子になってあげるよ)
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不備などありましたらご一報ください。
キャプションは随時編集します。
2020-02-15 05:57:06 +0000