彼女はボロボロになって、半ば深海棲艦となっても静かな海を取り戻すために戦った。
最後の戦いのとき、私は負傷し後退を余儀無くされた。
彼女は撤退する私たちが戦闘海域を抜けるまで踏み止まった。
やがて私たちは国連軍の艦艇に救助され、その数日後に戦争は終わった。
20XX年、特型駆逐艦一番艦吹雪はこの戦いで行方不明になったとされている。
終戦から数年後、南方の島に朽ち果てた艤装が漂着しているのが発見されたが、それが駆逐艦のものだとは辛うじて識別できても、彼女のものかどうかは分からなかった。
彼女はあの戦いで轟沈したという意見もあれば、深海化のために消滅したという意見、あるいは南方の海で彼女に似た人影を見たという話もある。
私は彼女は鉄底海峡に行ったと思うのだ。
あの海で沈んだ、多くの艦の無念を弔うために。
バカな妄想だと笑うだろうか。
だがかつて艦娘だったあなたは賛同してくれるはずだ。
私たちに勇気を与えてくれるのは戦場で誰かが沈められる話ではなく、ロマンチックなお伽噺なのだということを。
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キャプションの元ネタは『特殊任務飛行隊KG200』収録の『ストライク・オブ・ザ・ソード』です。
2019-10-15 23:08:16 +0000