文明課題対策図(改訂最新版/番号なし)

Taira Hajime

(『文明の持続可能性』改訂のさい、題名に【】を加えました)

人工知能(AI)を中心とする新技術と、それを活用した政策が、
現代の様々な課題を解決できることを示した図です。

理論的には図7のように分類できる文明課題を、
技術と政策が解決することになりますが、
ここでは政策実務の視点から課題を分け直したうえで、
それぞれの対策に活用できる技術を書きました。

社会生活を営む人間の文明活動においては、
多くの課題解決には技術だけでなく、
人々の利害を調整する政策が必要な場合が多いし、
技術と政策には助け合う関係もあるからです。

例えば環境問題においても、罰則を伴う全面禁止から利用料の負担まで、
場合によって様々な政策的配慮が必要なことが多いです。
逆に技術的問題でも、新技術開発や|基盤施設《インフラ》・利用規則整備のための
技術的政策の中で扱うことができます。

文明とは、富を生み出す技術によって発展し、
富を分け合う政策によって持続するのでありましょう。

技術的政策における課題が、物的資源の持続可能性です。
(資源枯渇、環境破壊、都市老朽化や災害・犯罪などの問題に対し、
富の安全を含む生産に役立つ技術を、健全に開発・利用する政策の
課題なので、その富を〝物的資源〟という要素で表現しました。)

経済・社会政策における課題が、経済・社会活動の持続可能性です。
(拡大・複雑・加速化する経済・社会活動を健全に保つため、
富の再投資を含む分配を調整する政策の課題なので、
〝経済・社会活動〟の持続可能性となりました。)

人的資源政策における課題が、人的資源の持続可能性となります。
(少子高齢化や経済・社会の変化に対応するため、政策の実現に必要な、
富を作って分ける人々自身の健康・教育を向上させる政策の課題です。)

行政管理政策についても、制度・政策の持続可能性が考えられますが、
この図では経済・社会活動の持続可能性の中に含めて考えました。
(もし行政管理政策として独自の課題を挙げるなら、
制度・政策の巨大化・分権化に応じた、人々の能力活用となりましょう。
この考えに立つと、人的資源政策の課題は健康・教育という富の向上、
行政管理政策の課題はそうした富の活用である、ともいえます。)

人類は今、文明の転換期(文明段階の移行期)にあります。

農耕技術は、文明を生み出しました。
工業技術は、文明を世界的に拡大しました。
情報技術は、地球という空間的限界への到達による衝撃を緩和しました。

しかし人類文明はまだ、
この惑星上における時間的な持続可能性を見通せていません。
様々な資源・環境問題、経済・社会問題、
あるいはその背景となる教育・医療問題といった、
政策上の課題が表れつつあります。

それらを在来技術だけで解決するのは難しいですが、
新たな画期的技術も生まれつつあります。
新たな文明段階を|拓《ひら》く技術を開発し、
普及・活用し得る政策が求められています。

技術と政策は助け合っていますが、長期的な変化の順序もあります。
文明の|段階《ステージ》は技術によって開始され、政策によって完成します。
科学・技術が経済・社会活動を豊かにすると、
その段階での活動を健全に保つため、制度・政策が利害を調整します。

しかし、後の図でも述べるように、人間の欲求は無制限的なので、
ある|段階《ステージ》での限界が見えると、政策は次なる技術の開発も求めます。
そこでこの図では、既存技術のもとでの政策課題を整理したうえで、
その解決に役立つと期待される新技術を書き出しました。

人工知能(AI)を中心とした様々な次世代技術は、
生物など自然物と、機械など人工物の間の障壁を取り払い、
いわば|良《い》いとこ取りで両者の持続可能性を高める、
(体内環境を含めた)自然環境や社会環境に優しい、
持続可能性(環境親和)技術ともいうべき技術です。

研究・開発政策を初め、各種の政策が連携して、
そうした新技術の健全な開発・普及を助ければ、
それらの技術は社会をさらに豊かにするだけでなく、
新たな社会を健全に保つ、各種の政策も支援してくれます。

新素材・新エネルギー技術は、
主として|社会基盤《インフラ》政策など、技術的政策を助けてくれます。

IoTとビッグデータ処理、知能ロボット、|生物工学《バイオテクノロジー》/|生体工学《バイオニクス》技術は
産業振興・社会保障など経済・社会政策を助けてくれます。

先進医療・教育技術は
保健・教育といった人的資源政策を助けてくれます。

もちろん、以上はあくまで重点分野の実例なので、
相互支援は行政管理政策も含め、技術と政策の全分野に及んでいます。

現在において特に重要な点は、〝人的資源〟の向上が、
技術的にも政策的にも可能、かつ必要とされることだと思います。

人工知能(AI)を中心とした次世代技術は、
富の生産と分配に加え、富を作って分ける我々自身、
あるいは最も貴重な富と言うべき、我々自身の健康や教育までも、
画期的な方法で支援し、向上させることができます。

|今日《こんにち》の政策でも生活水準の向上や少子高齢化、
地球規模の自然的限界と社会的統合への接近、
あるいは大量破壊兵器の出現などを背景に、
淘汰の犠牲や|費用《コスト》、|危険《リスク》なき人的資源の維持・向上が求められています。

すでに国連の〝持続可能な開発のための目標(SDGs)〟や
〝|人間の安全保障《ヒューマン・セキュリティ》〟などの政策、
我国のソサエティ5.0やスマート(スーパー)シティ、
スマートグリッド、マイナンバー、データヘルス、エデュテック活用
といった政策でも、そうしたことが考えられていると思います。

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2019-10-14 13:54:50 +0000