「お前の声が私を起こした。好きに命じるといい」
♦エリアル・アスカム (男 / 26歳 / 186cm)
今期pt:10 (STR:7 DEX:1 INT:1 LUCK:1)
かつて一騎当千とも云われていた傭兵の青年。
当時敵国に居た魔女の策にかかり、一枚の呪具に封じられた。
前期:【──】 前期pt:【──】
前期開花相手:【──】 / 今期:【──】
♦開花 10/14 素敵なご縁を頂きました♦
救いの手を差し伸べる、心優しき魔王様。
常夜の洞 レエゼルナハト/黎さん【illust/77188085】
長い眠りの中。それは"乞う"声でなく。ましてや"呟き"でもなく。
──紛うことなく、"私"を呼ぶ声がした。
「何故、私のことを知っていた」
問えば、今回の召喚者は黎という名で、魂を庇護し導くことを使命とする魔王であるらしい。
魂を管理する立場だからこそ魔具に込められた私に気付き、その手を伸ばしたのだと言う。
魔王というと良い印象は抱かないものの、呼び出した声からも、目の前の黎からも、殺気や悪意の類は感じない。
肩書というだけで、善人なのだろうか。そうして人を推し量れるほど自分は善人でも無ければ、何者にもなれなかったことを苦く思う。
「…つまり、私の仕事は無いと?」
そんな私の胸中など知るはずもない魔王は、何故、と私自身の苦い経緯をどうにも聞きたがって困った。
誤魔化すこともできず、結局私が折れて言葉少なに長々と語ったわけだが、飽きもせずに相槌を打ちつつ最後まで耳を傾けた根気強さは賞賛したいと思う。
結果、納得したらしいが、今度は私が不服を申し立てることになった。
武力を必要としていないのであれば何故呼んだ。いや、聞いたが。
一通り、魔王自ら国の中──鉱石が淡い光を放つ洞窟内を案内されたはいいが、当然魔物らしきものも見当たらず、役立てるとすれば力仕事くらいかと少し肩を落としたのも事実。
どうやら魔王は私の魂に興味があるだけで、すぐに還すというわけでもなさそうだ。…どうしろと。
封じられてから初めての事に頭を悩ませていると、やがて最後に辿り着いたのは檻の森と呼ばれる捕えた魂が転生を待つ場所。
そこで魔王は此方を振り返り、此処ならば縁の魂が在るかもしれないと、私を見た。
その言葉にどういう意図があるのか図りかね、それでも、浮かぶ魂の揺らめきからはどうにも目が離せない。
「──…たとえ、在ったとしても。敵国にとっての脅威であり、国の裏切り者である私に、合わせる顔は無いな」
触れようと伸ばした手を降ろし、黎の元へと歩く。
その顔は憐れむような、痛ましいものを見るような目だったが、同時に何か強い意思を感じた。
「……妙なことは考えるなよ?」
これまでのやり取りで、黎という魔王の人物像が何となく出来上がってきており、多少、釘を刺しておかなければならない気がした。
──そう、効いているか定かではない釘を刺してきたつもりだったが。
「何を、血迷ったことを」
すっかりレエゼルナハトでの生活にも慣れた頃。
手伝いで鉱石の発掘に精を出していた私を呼びつけた黎が前置きも無く宣った事に、目を見開く。
本来であれば番となる者に捧げるはずの心臓を、私に、と言うのだ。
曰く、魔具にかけられた禍福の呪いも、心臓を取り換えることと、そう変わりないと。
永き生を約束し、魔王の加護を与えればお前の事だから殺しても死なないだろう、と。
「な、…正気か? そもそも、お前は働き過ぎなんだ。私の暇に悪いと思え」
最早自分でも何を言いたいのか分からないが、混乱を極めているということは確か。
「そんな大事なもの、貰えるわけがないだろう!」
生まれてこの方、戦闘の絡まない素面でこんなにも激昂したことがあっただろうか。
そこまでされる義理は無い、と、ひどく狼狽えれば、黎は僅かに笑んで続ける。
私を解放することでその魂を正しく導く──自らが魂らに抱く想いを。
「ならば、私は──…私は、お前に救われることが此度の命なのだと、受け取ろう」
互いに、不器用な会話ではあったが。
そうして胸に納まった間隔の長い鼓動は、存外に、安心感をもたらした。
次いで、私を永年戒めていた肖像札は呪いを吐いた後、呆気なく空気に溶けて消える。
これでようやく、終わりが見えるのだ。ただ、その終わりはまだまだ、見えそうにない。
「黎。お前は主ではなくなったが、…無二の友だ。だから、私の帰る場所は此処にある。お前は誇りを守り、私は国を守る剣となろう」
「何、お前に縛られているわけではない。この魂の行く先は任せるが、生き方くらいは選ばせてくれるだろう?」
黎が魂の安寧のために身を削る頑固者とするならば、私もまた同じく、受けた恩は返さねば気が済まない性質なのだ。
かつての王もそんな私に手を焼いていた様子だったことが、ふと過ぎる。
「ただ…そうだな、旅に出るのは良さそうだ。今の世界を見て回りたい」
自分のためにも、この久しく外を知らない友に、自分の見てきた世界を話して聞かせるためにも。
♦フェシーナの花々【illust/76345084】
不備等、何かありましたらご連絡下さいませ。
2019-10-12 12:45:41 +0000