Ж ユエン 〈10pt〉
年齢:20歳 身長:180cm
性別:男性 一人称:俺 二人称:あんた
Ж 開花
契約 / 婚姻 未来に挑む者
アルカ・ペルシカ / アイネ様【illust/77513663】
「…………あ〜〜!なんだこの街!」
摩天楼立ち並ぶ都市。所狭しと行き交う人々。
職業や立場、性の差も──誰も彼も不満げにしていないところに少なからず引っ掛かるものの──目に見える。
一人くらい、その目に銀色が映るのを、緑青が伝染るのを期待したのに
どれだけ権力を持ち掛けても、今以上の暮らしを持ち出しても
ここの人々の瞳は黒を写すや否やまるで透明に見えるかのように通り過ぎた。
「つまんねえ……」
この辺り一帯だけの民性なのかも知れない、いいやそうであってくれと
今までの自分の常識と照らし合わせながら一縷の願いを胸に最も上に座す高閣へと翅をはためかせる。
目的の結果だけ述べるなら、喧騒が聞こえない、悲観や怒号のひとつさえない、欲を優先する者も勝利を求めている気配もない。
完全に自分の居る意味は無し。このまま次の街へ飛んでいこう。
そう、思った矢先にこの最上階に一人、少女が笑顔もなく佇んでいた。
考えるより先に身体が動く。窓を数回コツコツと叩けば、驚き見開かれた少女の大きな瞳と、確実に視線が交わった。
窓越しに意思の疎通が取れれば万々歳だと思っていたのに、無用心にも窓を開いた彼女には自分の意思があると分かる。
これは当たりかと、いつも通りの問いを投げる。
「突然悪い!お嬢さん、俺の髪や目は、何色に見える?」
返答は、期待していたものではなかったけれど。
「……ああ〜〜……そうか〜〜……。いやいいんだ、本当に突然、すまなかった。この国で探しものが見つかれば嬉しかったんだけどな」
じゃあ、と窓から離れれば、彼女は「また来てくれたら嬉しい」と零す。それが嘘偽りではないことは明白で、直感的だがこの国の他と何かが違う。
心躍り始めたこれはなんだろう。口角が上がるのがわかる。
「それじゃ……ああ、ちゃんと窓は戸締りしておくんだぜ?」
と言ったのも記憶に新しいのに、彼女はわざわざ窓のそばに立って出迎えるものだから吹き出して笑った自分を見て、少し困ったようにむくれるその顔は年相応の少女のそれで。
世間知らず……というより、自ずから世間を切り離しているんだろう。この街のこと、彼女……アイネのことを聞いても、中身が少ない。
「俺はアイネはアイネだと思って今目の前で話してんだぜ? 姿と、声と言葉、気持ち引っくるめて、あんた以外の誰が見えるって言うんだ」
「意思と感情、特に欲はすばらしいモノだろ。誰かより強く賢く富み幸福で在りたい、勝ちたい……この都市はちょーーっと……いやかなりそれが無いみたいだけど、アイネはどうなんだ?」
「チェス、ポーカー、ババ抜き……ジャンケンとか、まさかやったことないのか?……これは俺、勝てるんじゃないか……!?」
「わざとなわけないだろ!十敗……完全に運に見放されている……。な、アイネ、勝つのは楽しいだろ?負けて悔しいのは、俺を見ればわかるか…………ふっ、あははは!」
この都市の夜は規則的に回る。一斉に灯りの消える摩天楼と、一斉に灯りが点る歓楽街。
そして相変わらず自分の色を反射する光はない。
「あーあ、別に死にはしないけど物悲しいというか、張り合いのない世界というか……」
ただひとつ、この最上階を除いて。
「さて、そんな張り合いのない世界から出てみたいと思ってくれたかな、お嬢さん」
その青い瞳にほのかに緑が移る。銀の光が射す。
人生まるごと自分との未来に賭ける彼女に、黒が脈打つ。
「その言葉を待っていた! この俺ユエンが、アイネ、あんただけの力になろう。一緒に勝ち取ろう、選択すべき未来を!」
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フェシーナの花々【illust/76345084】
2019-10-10 17:39:38 +0000