企画元:フェシーナの花々illust/76345084 参加させていただきます。
その国は滅びた。
豊かな自然も美しい建物も、すべて一晩にして焼け朽ちた。
侵略と殺戮の果て、なにも残ることはなかった。――ただ一人、彼を除いては。
◆アイテル・カイン・リュユスキュル
19歳・男性・180cm 10p(STR:3 DEX:3 INT:3 LUCK:1)
侵略により滅びた王国の第四王子にして、唯一の生き残り。
王家に伝わっていた黒い"聖剣"を手に、放浪の旅をしている。
放浪生活により髪は伸び、服装もくたびれてきたが、
礼儀作法や食事でのマナーなど、時折育ちのよさが察し取れる所作を見せる。
彼が誓うのは侵略者への復讐である。
(復讐相手は別途出す予定や募集する予定はありません(モブです)。)
◇リュユスキュル王国 風光明媚な剣と魔法の国だった。現在は焦土と化し何も残っていない。
✿開花のご縁を頂きました:暗下の庵/アンジュ・ヒルネさんillust/77064395
故郷を追い出されてから少し。自分がどれだけ温室育ちなのか思い知ることばかりが続いた。疲弊し、少し痩せたように思う。あてもなく歩いたその果てに、見慣れない海が広がっていた。誘われるように波打ち際へ歩いていく。……故郷は内陸の国だった。泳ぐ術など知らない。突如現れた波に飲まれ、辿り着いたのは――
ヒルネ、と呼べばいいらしい。手厚い看病を施してくれたわりに、言われることは妙にちくちくする。
魚は骨だけにしてきれいに食べる。そう習って育ったが、どうにも珍しいものに見えたらしく、面白く感じた。
彼らの容姿や棲家の光景は見慣れないものだったが、幻想的で美しいと思った。
得意の狩りは彼らの食材を集めることの役に立ち、自分にもできることがまだあるのだと、純粋に嬉しかった。
それからだいぶ経ち、身体も癒えた。居心地の良さにも慣れてしまったが、ふと旅の目的を思い出す。このまま浸かるわけにはいかない。懐の剣は鈍く光を帯びている。
(俺が望むのは復讐だ。きみを巻き込むわけにはいかない。だから……さよならだ)
◇
旅の最中、気の合う仲間を見つけた。同じものに滅ぼされたという人間にも出会った。再建に協力すると約束を交わした。その中にいても、ふとヒルネのことを思い出すことが何度もあった。
今更都合よく戻って、受け入れてくれるだろうか。きっと彼女のことだから、憎まれ口を叩かれてしまうのではないだろうか。それでもいい……また、話したいと思った。
「わ、悪かったよ。もう、その……なんだ……捨てたり?なんかしない。……そんなつもりはないんだが……
いや、もういい。いいったら。俺が悪いんだろ。変な顔するな」
「それから、その…… ありがとう」
彼女のもとは、旅の話をしに帰る場所になった。
そのうちに、外の世界を知りたいと言った彼女の手を取り――連れ出した。
そしてかつての故郷へと辿り着く。そこには小さな芽吹きがあった。
「言ったかな。俺は水が怖いとは思っていないよ。この芽も雨を受けて、いつか大きく育っていく。
俺の故郷はまだ呼吸を忘れていないんだ。きっとまた建て直してみせるさ。
いつになるかなんて分からないけど、きみの持っている時間は長いんだろう。
俺にそれをくれる気はないか。うまく言えないけど、どうにも俺にはきみが必要なんだ。
……敵わないな」
「けっ…… …… いや。待て。物事には順序ってものが……そんな無責任なこと……
お、俺……働く?し……そうだな、まずは家を建てたいな。そしたら俺の方からちゃんと言わせて」
◇
2019-10-05 17:57:34 +0000