■フェシーナの花々【illust/76345084】
■所属組織:テラメリタ王国【illust/77049276】
■ポイント:10pt(STR:5 DEX:2 INT:1 LUCK:2)
■(10/8)素敵な開花のご縁を頂きました!
マリス商会のミルカ・マリスさん【illust/77157270】
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彼女に初めて出会ったのは魔物討伐の帰路。
我々が取り逃がした魔物に襲撃されていたキャラバン隊を率いていたのは、まだあどけなさを残した少女だった。
先ほどまで魔物に襲われていたというのに怯える様子もなく、白い肌によく映える桜色の唇は、落ち着いた穏やかな笑みを形作っていた。
彼女の名はミルカ・マリス。
その名を聞いて、テラメリタ国内で広く知られているマリス商会の人物である事がすぐに分かった。
他の従業員達の態度や、彼らに対する柔らかい物腰から察するに、商会の中でも高い地位の人物なのであろう。
商会の皆に怪我がないかの確認をすると、逆に彼女は軽い傷を負っていた私に助けてくれた事への礼として、商品である傷薬を譲ってくれた。
彼女から譲り受けた傷薬は驚くほどの効果で、普段なら治るまで数日かかる傷もあっという間に跡形もなく癒えていた。
早速同僚達に商会の傷薬を薦めてみたが、相変わらず押しと勢いが強い、と窘められた。
自分が良いと思う物を薦める事のなにが悪いのだろうか?
後日、我々はマリス商会の護衛としてキャラバンに付き添い、短い旅をする事になった。
道中で見つけた白い花を摘み、傷薬の礼の言葉と共に彼女に差し出した。
もちろん商会の令嬢である彼女には豪奢な宝石や装飾が一番似合うのであろうが、ただ単純に、素朴な野の花も似合うだろうと思ったのだ。
彼女は少しだけ驚いた表情を浮かべた後、穏やかな笑みで花を受け取ってくれた。
それからも傷薬の礼にと、花や花冠を作っては手渡した。
「…似合いますか?」
そう言いながら花冠をかぶり笑う彼女の表情は、以前よりも少し柔らかく感じたのだった。
テラメリタに彼女が滞在している時には、商会の手伝いを頼まれる事も増えた。
もちろん騎士として困っている民に手を貸すのは当然の摂理…ただ、そういう理屈を抜きにしても、彼女と共に過ごす時間は穏やかで心地がよく、正直に言えば手伝いを頼まれるのを心待ちにしていた。
たくさんの荷物を商会の倉庫へ運び終わった頃、ちょうど休憩の時間を迎えた。
「仕出しの軽食のサンドイッチですよ」とにこやかに言う彼女から小さな包みを受け取る。
たかがサンドッチ…しかし今まで食べてきたサンドイッチとは比べ物にならない美味さに思わず大きな声をあげてしまう。
その様子に彼女はいつもよりも楽しそうに笑い、もっとどうぞ、と新しい包みを私に差し出してくれた。
礼を言いながら受け取り、無心で口へと放り込む。
彼女にとってはごく普通の仕出しなのであろう…しかし私にとっては今まで縁もなかった洗練された食材によるサンドイッチに、彼女との身分の違いを実感してしまう。
同じテラメリタに住む同じ民といえど、育った環境も財もまるで違う…文字通り、私とは住む世界が違うのだ。
それはきっと彼女も感じているとは思うのだが…それにも関わらず、こうして私と同じ目線で接してくれる事に彼女の懐の広さを感じる。
手伝いの後、街外れの高台にある大木の元へ向かう事もあった。
その可憐な容姿に似合わず行動的な彼女はときおり木に登り、人々の営みを見つめるために街を見下ろしていた。
木登りなどすれば自重で枝を折りかねない私は、いつもそれを下から見守っていた。
街並みを見つめる彼女の瞳はとても穏やかで、彼女は彼女なりに、この街を好いているのだろう事が伝わってくる。
ふと視線を彼女から街並みへと向けると、既に日は傾きはじめ、街には息吹くように明かりが灯り始めていた。
そろそろ日も暮れるから帰ろうと声をかけると、彼女は少しいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「受け止めてくださいます?」
彼女からのその問いかけに私は両手を広げると、彼女は笑顔のまま、躊躇する事なく木から飛び降り私の腕の中へと飛び込んできた。
しっかりと抱き留めると彼女は私を見上げて頬笑み、礼を言う。
「カウエル様はお優しいから、ついつい頼り切ってしまいますけれど。ご迷惑ではありませんか?」
彼女の口から突然発せられた迷惑という言葉に、思わず大きく首を振る。
「迷惑など、とんでもない!」
その言葉に彼女は私をじっと見つめると、少しはっとした表情を浮かべた後、小さく頬笑んだ。
「…貴方という人に出会えて、私は幸せです。」
今思えば、あれは彼女なりの勇気のあらわれ…精いっぱいの好意の表現。
その事に私は気がつかず、ただ思うまま正直に「ありがとう、私もだ」と伝えた。
私からの返答を聞いた彼女は、いつもと少し違う笑みを浮かべた。
…その笑みには喜びと、少しの寂しさを感じた。
その日は特に任務も事件もなく、騎士団の詰所で待機をしながら同僚達と世間話をしていた。
いつものように商会についての話をしていると、同僚は辟易した様子で私へと告げた。
「お前がマリス商会のお嬢さんの事を話す時な、押しと勢いが強すぎるんだよ、もう少し落ち着いて話したらどうだ?」
その一言に私は弾かれたようにハっとなる…そうだ、私はいつだって、自分が好きなものを話す時には、押しと勢いが強すぎると苦言を言われるのだ。
今までの小さなやり取り、出来事がひとつにつながっていく…彼女と共にいる時の自分の中に芽生える、このどこか暖かな安らぎにも似た気持ちの意味にもようやっと気がついた。
「すまない…急だが今日はこれから休暇を貰う。」
「え…え!?そりゃ~今日は何も無さそうだからいいけど、そんな突然どこいくんだ?」
怪訝に問う同僚には振りむかず、私は答える。
「騎士としての責務を果たさねばならない。私は…。」
私は彼女の想いに応えねばならない…長く待たせてしまった今、一刻も待たせるわけにはいかない。
急ぎマリス商会へ向かう途中、一輪、小さな花を摘む…傷薬を貰ったお礼に初めて渡した花と同じ花だ。
「…私はこれといった地位もなく、財もない身だが、ミルカ殿…いや、ミルカ、貴方の剣と盾となり、命をかけて守ると誓おう。」
■モーギュ
モーギュは種族名。大きな角と尻尾を持ち、図体が良く育つ。寿命は120歳~150歳ほどで、育った環境によって大きく上下する。肉体を生かした武力派に見えるが、実際は手先が器用で頭もよく回るため、研究職や鍛冶職につくものも多い。(カウエルは育った環境が脳筋環境だったため、あまり頭はよくなく、寿命もそこそこ)
■申請について
(文字数制限に引っ掛かってしまったため、申請についての文は削除しました。スミマセン…!)
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2019-10-05 09:49:52 +0000