♪フェシーナの花々【76345084】一期【76935041】に参加させて頂きます。
【組織名】飛空楽団 ドゥディッヒカペレ
【novel/11979968】
空を翔け、世界を巡り、音楽を奏で広める創設240年の音楽団。
若々しい姿の楽団員達がその名と音楽を各地に響かせている。
主に音楽団と楽団員達を支える人々が暮らす一つの小さな都市である大型飛空船の事を指す。
【代表者】アインス・フィリーネ
38歳/153㎝/女性/音楽団の第22代楽団長。
【ポイント】10pt STR:0 DEX:8 INT:2 LUCK:0
♪10/6 素敵なご縁を頂きました。
36代目息吹屋・叶さん【illust/77110441】
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第22代楽団長アインスは団長時代もそれ以降も頻繁に船を降り、街を巡っていた。
各地の名産品を食したり、収集することが趣味だったといわれている。
後に音楽団の一部が武装する切っ掛けなった叶という名の武器商人と出会ったのも小さな町の食事処だと記録が残されている。
その他にも彼の武器商人から得たものは多く―――
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「お兄さん、一杯奢るから旅の話でも聞かせてもらえないかな?
見た感じ、このあたりの人間ではなさそうだし、お兄さん旅人か何かだろう?」
「私はアインスという。
近くこのあたりで公演開く予定の音楽団の人間でね、今は次の公演先を決めるのに情報を集めているところなんだ。といっても半分は息抜き。
こっちの町のご飯はおいしかった、あっちの町は治安が悪かった、そんな話が聞きたいんだ」
「ほうほう。そうすると、腰に吊るしているそれは貴方が作ったものなの?」
「先代の武器で”かたな”…?この武器が貴方の人生を決めた運命で目指すところということだね」
「…うん、いいな」
「ところで”かたな”というのはあまり聞きなれない音だけど普通の剣とは違うのかな?」
「―――なるほど…ちょとあの人に提案してみようかな…ああ気にしないで今のは独り言」
「うん?私の話?話すより聴いてもらった方がはやいんだけど…私の場合生まれる前から運命と出会ってたって感じだよ。
もちろん自分で選んだ道だし今の自分が何より誇らしい。
ただ、今はもう少し回り道して違う出会いもしてもよかったと思っているけどね」
「で、それより、さっきの話の続き聞きたいんだけど―――」
「ん、わりと大事なことだよ町の様子は。私たち音楽団が提供するのは娯楽だ。
経済的にも精神的にも余裕がないところにはいっても収益がはいらないからね」
「本当は利益より喜んでくれる人に聴いてほしさ。
だから請われたら何処へだって行くつもりだけどね。
ま、飛び回ってるせいもあってかなかなかないんだけど」
「あぁもうこんな時間か…楽し時間をありがとう。
お礼にお酒とご飯だけじゃなく、一曲披露出来たらよかったんだけど…残念ながらこの店には楽器の類はなさそうだ」
「はい、これはチラシ。この近くで公演をやる予定といっただろう?気が向いたら来てくれ。
最高の席は流石にタダでというわけにはいが…それなり席なら私の奢りで用意するよ。
来てくれたなら貴方の世界が変わる程の音を聴かせてあげる」
「おや、本当に来てくれたのかい?ようこそドゥディッヒカペレへ。
興味を持ってくれてうれしいよ。で、どっちの席にする?」
「叶、貴方の貴重な時間は無駄にはさせないよ。
さ、私達の生み出す音を感じていっておくれ」
♪
「武装?一応、警備員はいるけれど…無縁だったし武装らしい武装はしてないね。
危うそうな地域では浮上したままだし、特別な理由がなければ入団入学希望者関係者以外は新たに船に乗せないから危険はないと思ってたけれど…叶の目には危うく映るかい?
それなら検討しよう。私は貴方の目と情報を信頼しているんだ」
「…はぁ。子供一人とはいえ、侵入者がいることに数日気づいてないというのは問題だね。
悪意ある者が侵入したら何も打つ手がないのは拙い。
叶の言う通り武装の類は必要だね。
他にも気づいたことがあれば教えてくれ」
「今回もありがとう。やはり叶の作る武器は綺麗でよい音がきこえる。
しかし…貴方の命と時間は有限だ。
それを私達のためにこんなにも使わせて…とても惜しいことをさせているのではないかと思ってしまう。
ちゃんと理想には近づいているか?」
「そうだね、良いこと、だ。弱気こそ貴方と貴方の技術に失礼だったね。
私は、私達は文字通り身を削って貴方が生み出したものに見合う価値のあるものと活かしてみせよう」
「おや、ここでもう降りるのか?それなら少し待ってほしい。
私も叶と一緒に行く。足手まといだろうが、連れて行ってくれ。
引継ぎはしてあるし別に私一人が居なくても私達の楽団は回っていくから心配はいらないよ。
後学のために貴方が何を見ているのか、船から出た旅がどのようなものか知りたい。
勿論、美味しいものも食べ歩こう」
「叶、体調はどうだい?もし悪くないなら聴いてほしいものがある」
「私から叶へおくる一曲だ」
「本当はもっと早く渡したかったんだけど、こんなに時間が掛かってしまった」
「でも、私も貴方と同じよう何かを生み出してみたかったんだ。
どうか責任をとって受け取っておくれ」
♪
楽譜を手放そうと覚悟が決まったのは最後に見送ってから幾日も過ぎたあと。
手放すこと自体は二度目。
一度は船を降り叶の歩みに同行するため、けじめとして預けた。
ただ今回は違う。
船を降りるわけではないが、もういずれの楽団服にも袖を通すことはなくなる。
燃える楽譜を一緒に見届けてくれた彼は火の粉を見ながら、
-君のそれは愛ではなく「恋」だったのだろうね-
そう言っていた。
それは、それなら、かなわないし交わらないはずだと得心がいく。
私は彼と彼が命をかけて生み出すものに恋い焦がれていたのだ。
いい年してなんと幼いことか。
もっと早く気が付いていたからといって変わりはしないかもしれない。
それでももう少し渡せたのではないだろうか。
すでにただの灰になったもの達を新たな決意とともに握りしめる。
この命が尽きるまでにもう一度、ただのアインス・フィリーネとして花開いてみせようと。
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―――彼女が在籍期間に楽団に残し変えたことは前述してきた様とても多い。
後年編曲者としても名を残す彼女の楽譜がいまだ当時と同じ形で残るものも少なくない。
ただ、作曲者として彼女が残した楽曲はあまりにも少ない。
「憧憬」と「ついの夢」と名付けられた二つの楽曲。
いずれもピアノ独奏曲だったと伝えられているが、後世には他者の手が加えられた協奏曲としての楽譜しか残されていない。
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(キャプション最終更新日:2019年11月2日)
2019-09-30 15:00:10 +0000